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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 10

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高速道路のインターで、携帯が鳴る。沢木だ。清瀬は片手で携帯を操り通話ボタンを押す。

「沢木か、どうだ」
『はい、K県警に連絡をとって武長の家へ向かわせたところ、本人は留守とのことです』
「留守…?」

いない?
会社にも立ち寄ってはいないし、家族も行方を知らないという。夜の間に行先も告げずに出ていったらしい。

(まさか一弥が?)

須賀夫妻は、一弥と芽衣に呼び出されて殺されている。一弥は、旭は、何をする気だ。対峙しているというのか?

「俺は須賀旭の実家に向かう」
『了解です。こちらもすぐに向かいますから!無茶はしないで下さいよ!』

ノートに書かれた一言だけが、いまの清瀬を突き動かしている。どうか間に合え、早まった真似はしないでくれと祈る。こんな別れ方、絶対に受け入れられない。

(戻ってこい)

もう一度、みんなで温かい食卓を囲んで、バカな話をして、家族みたいに過ごすのだ。それが本当の家族ではなくても、それでいいのだ。清瀬が、清瀬巽として生まれ変わったように、同じ時間を共有することで、ぬくもりをわけあうことで、静かに心を解け合わせていけばいい。

彼らが生きたいと願うなら、それを絶対に叶えたい。叶えてやりたい。今度こそ。




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作品名:慟哭の箱 10 作家名:ひなた眞白