反骨のアパシー
「その通り。これから金銭出納簿を決裁に回すそうだ。各自、金銭出納簿は締めておくように頼むよ。まあ、わからないことがあったら、北島さんに聞きなさい。彼は以前、生活保護の仕事をしていたから、お金にはちょっとうるさいと思うよ」
栄太郎は突然、松田寮長から振られ、困惑した表情を浮かべた。
(生活保護の金計算と、利用者の小遣いを一緒にするなよ……)
「それと、中島さんが停職になって、代わりに臨時任用職員で一寸木(ちょっき)さんという人が来る。県立ひめゆり園でも臨時職員をやっていた経験のある人だから安心してください。臨時職員に横内さんの担当を任せるのは酷だから、横内さんの担当は北島さんにやってもらいたいと思っています。そして、北島さんの今、担当している稲田さんを一寸木さんに渡す。そんな心積もりでいてください」
「私が横内さんの担当を?」
「よろしく頼みますよ」
松田寮長はさらりと言って退けた。
「まあ、こういう事態だから当寮ではしばらく短期利用や一時利用を断るつもりですので、そのつもりで皆さんもご安心を」
「異議あり!」
栄太郎は叫んだ。一同が栄太郎に注目する。
「私が横内さんの担当をするのは構いませんが、臨時職員が配置されるなら、短期利用や一時利用を積極的に受け入れるべきだと思います」
「短期や一時が入ってくると寮の中が掻き乱されるんだよ」
田上が苛立ちを隠せずに言った。
「それに短期や一時が入ってくると職員の負担も増えるんだよ。いつも戦々恐々としているもんね」
見田が田上をフォローするように言った。
「それに地域支援課の方も早急なニーズはないと言っているんだ」
松田寮長は腕組みをしながら言った。
「それは違うと思います。ニーズは障害の重い軽いに関わりなく、掘り起こせばあると思います。それに職員が楽をしたいから一時や短期を受けないなんて、本当に公立施設ですか、ここは?」
「本当はあんただって、大変だと思っているんだろう?」
田上が責めるように、栄太郎に言った。