小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

慟哭の箱 9

INDEX|4ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 


「…お願い」

ぽろぽろと涙を零す芽衣。旭は力なく立ち尽くしている。

「わたしのことは忘れて、幸せになって。お願いだから。ねえ、わたしの願いを、今日くらいは叶えて…」

旭はもう、それ以上何も言わなかった。打ちのめされたように固まっている。

「清瀬さん…旭をお願いします…」
「…わかったよ」

秋田に連れられて行く芽衣が、清瀬に深々と頭を下げた。
芽衣の願いもむなしく、今後、旭もまた罪に問われることになるだろう。おそらく殺害の計画を練ったのは一弥だ。多重人格であることがどう絡んでくるかはわからない。それでも、旭もまた証言台に立つことになることは明白だった。どれほど芽衣が庇おうが。そんなことは、旭も芽衣もわかっているのだと思う。それでも、互いを罪人にしたくないと庇いあうのだろう。大切な人だから。

やるせない。これでよかったのか?
誰が幸福になれるというのだろう。結局自分は、罪を白日の下にさらけ出して、つらい記憶を掘り起こして、いたずらに彼らを苦しめただけなのではないか。



.
作品名:慟哭の箱 9 作家名:ひなた眞白