慟哭の箱 9
出頭します、と芽衣は清瀬に告げた。泣きはらしたであろう目のふちは赤く、しかし憑き物が落ちたように穏やかな表情を浮かべている。ようやく解放されると、そう思っているのかもしれない。
「須賀夫妻を殺したのはわたしです。旭への虐待の件をちらつかせて呼び出しました」
罪を告白する彼女の手を、隣で旭が強く握りしめている。うつむいて、くちびるを噛みしめたまま。
「遺体を損壊したもの、わたしです。油断したところを石で殴打した後、死んだ二人を見て怒りがこみあげてきたんです」
これは旭のぶん。
これは一弥の。涼太の。氷雨の。真尋の。
自身の感情を抑えることができなかったと、彼女はそう続けた。
「旭は…一弥は、指一本触れてない。わたしが一弥に計画を持ちかけて殺しました。許せなかった…」
どこまでが真実かは、これから精査されて明らかになるだろう。
「芽衣が罪人なら、そうさせたのは俺だ。俺も同罪です。罪を償います」
旭が言うのを、芽衣が制する。
「違う。清瀬さん、旭はひとつも罪なんて犯してない!全部わたしがしたことなの!」
「芽衣!」
「旭は幸せにならなきゃだめなの!」
芽衣の叫びに、旭が言葉を飲み込むのがわかった。