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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 8

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腕をどけた真尋の顔は、冷たい笑みを浮かべている。一弥だ、と思う間もなく、猫のように跳ね起きた彼に首を捉えられ、そのまま床に押し倒された。馬乗りになって体重とともに首を締め上げてくる一弥。

「ぐっ…!」

喉が熱い。呼吸ができない。

「…あんたは知らないんだ」

目の前に、一弥の顔がある、ぎらぎらした瞳に浮かぶのは笑みなのに、泣いているように見えた。狂気を帯びたその瞳から、目を逸らせない。

「愛のない家族、愛のない教育、愛のないセックス…俺は地獄を見たよ。もう怖いものなんて一つだってない。あんたを殺すことだって、躊躇いなくできるんだ」

かすれた声が笑う。

「いち、や…」
「あのとき、助けに来てくれなかったくせに…今更なんだよ…今更救いに来たって遅いんだ…もう戻れない…」

白くなる視界に降ってくる声とともに、締め上げてくる力が弱まっていくのを感じる。


「助けに来てくれなかったじゃないか!!何度も何度も叫んだのにッ!!」


絶叫を最後に、一弥の身体から力が抜けた。ひりつく喉押さえをながら、倒れこんできた身体を受け止める。ゆっくりと呼吸を整え、胸にある熱い頭に触れた。

作品名:慟哭の箱 8 作家名:ひなた眞白