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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 8

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「…両親の頭が上がらないのをいいことに、あの男は旭を弄んだ。両親も知りながら放置した。死んで当然だよねえ、そんな親は」

真尋の目に、はっきりと怒りが浮かぶのがわかった。

「一度や二度じゃない。旭が中学にあがるまで、虐待は続いたんだ」

無力な者を、権力者が傷つける。吐き気がするほどに残虐な振る舞いだと思う。

「旭は逆らえなかった…両親に捨てられたら、また行き場を失うから。二度も棄てられるわけにはいかなかったから…だから黙って耐えるしかなかった…そして心がばらばらに壊れたんだ…」

言葉が途切れて、両腕で顔を覆った真尋がソファーに横たわった。

「…真尋」

つらい記憶を、ずっとずっと閉じ込めてきた。生きるために、心を壊すしかなかった。地獄だと、芽衣は言った。その通りだ。旭は地獄を見てきた。守ってくれるはずの両親からの虐待、心無い大人からの暴力。怖かったと思う。苦しかったと思う。想像することしかできない自分は、本当に無力だと思う。


「――ねえ清瀬さん」


顔を両腕で覆ったまま、真尋が口を開いた。声は、笑っているようだった。

「あのときどうして来てくれなかったの?」

笑いたいのをこらえているようなその声に、清瀬は不穏なものを感じて緊張する。

「助けてって、俺はずっと叫んでたのに」
「…真尋?」

作品名:慟哭の箱 8 作家名:ひなた眞白