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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 8

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「清瀬さんは、どうなれば彼らを救済できると考えているのですか?」

静かな声で問われる。

「どうなれば…?」
「野上先生の目指す治療は、人格統合です。もちろん僕も、そこを目指してみんなを導くつもりです。でもね、人格が統合されたら、旭以外のみんなは」

消えてしまうんですよ、とイシュは言う。

「正しくは混じり合うのだけど…消えるわけじゃなくて、旭の中の心の海に戻っていく。でもそれって悲しくないですか。真尋たちは旭の幸せのためならって承諾すると思うけど、もう真尋という意思はなくなる」
「……」
「ごめんなさい。いまは事件の話でしたね」

イシュがそう言って向き直る。

「芽衣と旭が接触することで、旭の中にどんな思いが生まれるかは僕にも断言はできない」
「正しいのだろうか、それは」

あの子の心を、あの子たちの心を、さらにかき乱すことになりはしないだろうか。

「旭のすることは、すべて正しい。だから僕は信じている」

静かに断言するイシュ。迷いも躊躇いも一切ない言葉の使い方だった。

「僕は旭の良心であり理性だ。だから僕は、あなたのことも信じている」

射抜くようにまっすぐな視線。怖いくらいだ。絶対に逸らされることのない目。

作品名:慟哭の箱 8 作家名:ひなた眞白