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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 7

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金曜日の午後。肌寒い風が吹いている。空は曇っていて、そろそろ洗濯物を入れたほうがいいかもしれないと、芽衣(めい)は思う。間もなく小学生たちが帰ってくる時間だ。おやつの準備をして、宿題をさせて…とこのあとの仕事について考えていたとき。

「めいせんせーー!」

ランドセルを背負った小学生二年生の男女二人が、帰宅するなり芽衣を呼ぶのが聞こえる。

「おかえり。どうしたの、慌てて」
「門のとこに怪しい奴がいたの!」
「白百合(しらゆり)の家はどこですかって、聞くの!」

怪しい奴?この養護施設を訪ねてきた客だろうか。

「園長先生にゆってえ~」
「怪しいってゆってよ~」
「あっ、来た!」
「やだあー!」

二人が芽衣の背中に隠れる。振り返ると、玄関に男が立っていた。ひょろながい男だった。スーツを着て、一見サラリーマンのよう。しかしどこか着崩した、気の抜けたゆるい印象。眠そうな、それゆえか温和な瞳が静かに笑っている。

「…あの、こちらになにか御用ですか?」

尋ねると、男は小さく会釈をした。

「驚かせてすみません。清瀬と言います」

聞いたことのない名前だ。訝しい目を向けた芽衣に気づいてか、彼は困ったように笑うと胸元の内ポケットに手を入れた。

取り出したのは、警察手帳だった。
刑事だ。芽衣の全身が緊張する。ついに来たのか、という思いと、ようやく来てくれたという安堵が入り混じる。それを悟られないように、芽衣は平静を装った。

「警察の方が、何かご用でしょうか…」
「この児童養護施設、白百合の家で保育士をされている篠塚芽衣さんですね。少し話を聞かせていただきたいのですが」

向こうはこちらを知っている…。顔を上げて、芽衣はまっすぐに刑事を見つめ返す。

作品名:慟哭の箱 7 作家名:ひなた眞白