慟哭の箱 7
隠された箱の中で、一弥はそれと向かい合っていた。向かいに座る「彼」の姿は暗がりに見えない。黒いブーツの足元だけが見えている。
「一弥とやっと話ができるね」
「……」
こいつは誰だ。自分が把握しない人格が潜んでいたとは知らなかった。自由にスポットに立てること、支配人格である一弥でさえも、こうして任意に呼び出すことができること。それらから想像できるのはただひとつ、この目の前の正体不明の人格が、一弥よりもさらに上位に立てる力を持っているということだ。
七番目であり、ゼロ番目であると彼は名乗った。
「おまえは…いつ生まれた人格なんだ?一体いつから…」
ずっといたよ。目の前の暗がりから、そんな答えが返ってくる。機械のように抑揚のない声。
「旭が生まれたときから、いたんだよ。きみたちの目には見えないところで」
何を言っているのか、一弥には理解できない。
「痛みを返して」
ブーツの男は穏やかに続ける。
「旭はもう、何もできない子どもじゃないよ。清瀬さんや、支えてくれるひともちゃんといる」
だめだ、と一弥はかぶりを振った。
「なぜだめなの」
「…なぜって、」
「すべてを克服して旭が幸福になる。それがきみたちの究極目標ではないのかな」
そうだ。その通りだ。そのために一弥たちは生まれた。