慟哭の箱 7
「旭が幸せになる。それでいいじゃない。どうしてそこへ導いてくれる清瀬さんを信じないの」
「…あいつだって裏切るに決まってる」
「そうなの?旭自身が信じ切っているのに、どうして賛同してやれない?」
「…」
だって。
じゃあ。
「旭が…幸福に、なったら、」
俺たちは、どうなる?
痛みを返し。
記憶を返し。
それを旭が克服したら、俺たちはどうなる?
「怖いかい」
声は諭すように続く。こちらの不安を見透かすように。そのくせ激しく一弥を動揺させるのだった。だめだ。のまれてはいけない。清瀬を信じてしまったら、存在意義を失ってしまう。
「怖くなんかない」
言い切る声は、震えることなく相手に届く。
「…それに、まだ終わってない」
「なにがだい」
「復讐だよ」
そう、復讐。
「まだ、あいつが生きてる」
あいつが。
あいつだけは。
絶対に何があっても。
「――俺の手で殺さないと、」
殺さないと。
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