慟哭の箱 6
「だってわが子だもん。愛してるのは当然でしょう?」
「でも…俺は、殺人犯の、子でした…。俺には罪人の血が流れてる」
咎を持った子を、他人の子を、どうして。
清瀬ならできるだろうか。
自分を、須賀旭を、許して抱え込んで、支えていくことができるだろうか。
あのなあ、と呆れたように父が言う。
「おまえ、目の前ですっころんで泣いてる子がいるとするだろ」
「……?」
「その子の親は、世界中を灰にした核兵器のボタンを押した人間だとする。おまえどうする?蹴っ飛ばして石つぶて投げるのか?」
清瀬の脳裏に浮かんだのは。
幼いときの自分自身だった。どうして俺だけ。繰り返し己の運命を呪い続けた自分自身。
「助け、ます…」
「そうだろ?」
だってその子に罪はないじゃないか。
幼かった清瀬にも、罪なんてなかったじゃないか
罵られる罪などない。石つぶてを投げられる罪など。
どうしようもなかった。どうしようも、なかったんだ。