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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 6

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「…清瀬さんは戻ってくる、」

旭はなんとかそう伝える。この声を発するたびに苦しいのはきっと、旭がここで発言権を持てない弱い存在だからだ。だけど、それではだめだ。俺の言葉で、みんなを導かないと。

「うそ…旭が、しゃべった?」

女性が驚いたように言うのが聞こえる。

「俺は信じてる…誰に何を言われようが、たとえ裏切られたって…あのひとがくれたぬくもりまで、ウソになるわけじゃない…」

優しくしてくれた。自分のために骨を折ってくれた。温かいご飯。言葉。ぬくもり。そして、話してくれた過去のこと。

「裏切られても、信じ続けることが…俺たちみんなに欠けてるものなんだ…だからいつまでも…ここは暗くて…寒くて…俺たちは不安なんだ…」

だから、どうか。信じる勇気を。


「僕もそう思う」


聞いたことのない声が響く。がたんと音をたてて、革靴をはいた足が立ち上がる。


作品名:慟哭の箱 6 作家名:ひなた眞白