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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 6

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勇気



椅子が輪になっておかれた、暗い箱の中。

「もうあの刑事は戻らない」

冷たい声が反響する。まるでトンネルみたいだ。

「そんなことない」

これは、ああ真尋だ。真尋の声だ。旭はそれを知っている。スニーカーの足元をぼんやり眺めながら、真尋の熱っぽい声を聴く。

「あの人は、帰ってくるって言った。俺は信じる」
「俺が信じるなって言ってもか」
「…信じたい、」

真尋は絞り出すように言う。

「どうかな?全部を知っても、わたしたちを受け入れてくれるのかな?」

女性の声。サンダルの足元が言う。

「ぼくは、おまわりさんを…信じたいよ」
「…俺はどーでもいいけど、裏切ると思うなあー」

子どもの声と、けだるそうな男の声が続く。

言わなきゃ、と旭は重い頭を上げて声を出そうとする。だけど、力が入らなくて、声を出すのがひどく億劫だった。

(だめだ…俺が、しっかりしないとだめなんだ…)

遠くなりそうな意識を呼び戻そうと、必死で自身に言い聞かす。
ここで彼らに決めさせちゃだめだ。俺自身の問題を、彼らにゆだねてはいけない。

そうやって、見ないふりをして、すべてを任せて。それではだめだ。変わりたい。

思いを示せ。

作品名:慟哭の箱 6 作家名:ひなた眞白