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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 6

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わかってるよ、と清瀬は繰り返す。梢はそれならいいの、と笑った。子どものころと変わらない屈託のない笑顔で。

「俺はもう、ここで泣きたいことなんて一つもないんだ」
「うん…」
「父さんと母さんと、梢のおかげだ。この夜の海を見ても、もう悲しくない。死にたい、消えたいって、思わない」

ありがとう。そう伝える。

「でもお兄ちゃん、まだ泣いてる子がいるよ」
「うん?」
「助けてあげなくちゃね」

ああ、そうだ。
かつての自分と同じ暗闇の中で、不安を抱えている魂たちのところへ。

「帰ってやらなくちゃな」

信じさせてと真尋は言った。あのとき、もう二度と彼らに絶望を与えつてはいけないのだと痛切に思った。それが、出会った大人である自分の、彼の心に触れて扉を叩いた自分の責任なのだと。




作品名:慟哭の箱 6 作家名:ひなた眞白