小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

慟哭の箱 5

INDEX|7ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 


「テレビ見ながらどっかりトドみたいに寝っ転がりなさいよ。息子の里帰りなんてそんなもんよ」

母の言葉に思わず吹き出してしまう。

「父さんも、これでもう畑もひと段落だから。みんなでごはん食べましょ」
「ようやっと大根の種まきだ」

見れば父は作業着姿で、日に焼けた顔も泥で汚れている。

「すぐに風呂の支度をしますね」
「すまんな巽」

両親はかつて小学校で教べんをとっていた。定年を迎え、趣味の陶芸や生け花の先生をしながら、畑を耕して暮らしている。両親の虐待、そして両親を失った清瀬のことを知り、養子として引き取りたいと申し出てくれた二人。

(…思えば、昔は反抗したっけな)

清瀬は薪風呂に水を汲み火を起こしながら思い出す。

清瀬の実の両親は殺人犯だ。借金によるもめごとの果てに知人を刺し、交通事故の果てに死んだ。そんなクズの息子を引き取りたいなんて、おめでたい偽善者だと、幼かった清瀬は二人を拒絶した。妹となった梢も同様に遠ざけていた。

(でも清瀬家のひとたちは、俺を守ってくれた)

中傷など、清瀬の知らぬところでもたくさんあったと思う。清瀬自身、奇異の目で見られることがあったのだ。その親となった両親は、心無い言葉の標的になったに違いない。

それでも、愛してくれた。

罵られたことも。軽んじられたことも。清瀬の記憶には一つもない。
実子の梢と同じように接してもらえた。行事ごとには必ず来てくれたし、悪さをしたら本気で怒られた。誕生日には祝ってくれて、特別な日でなくとも毎日過ごす中で愛情を注いでもらった。
実の子でない、ということを忘れるくらいに。

(どうして俺を愛してくれたのだろう…)

清瀬はずっと考えてきた。

作品名:慟哭の箱 5 作家名:ひなた眞白