慟哭の箱 5
「言われてみりゃ、俺ら旭と直接言葉を交わすことってなかったなあ。俺らの存在を、旭は知らなかったわけだから」
つまりは一方通行だったのだ。
「簡単にでいいんだ。一言だけでも書いてやってくれないかな」
「うんうん。俺こーゆうの好きだな!机借りてい?」
「ご自由に」
鼻歌交じりに机に向かう真尋。
「留守の間、頼むよ」
「んー」
その背中に声をかえ、清瀬はベッドに横たわった。心地よい疲労が身体全体に広がっていく。
「刑事さん、寝ちゃった?」
背を向けたままの真尋の声が聞こえる。
「…いろいろありがとね」
囁くような声にぬくもりを感じ、清瀬は静かに目を閉じた。
.