そらのわすれもの6
「大丈夫だよ…非力じゃないし、人間じゃないから。優太見たよね、あたしの本当の姿。」
「何だよ、それ。」
知秋は罰が悪くなり、布団の中で丸まった。
膨らんだ布団がモソモソ動く。
「…。」
「…。」
明らかに誰よりも弱そうに見えるその姿を優太は眺め、知秋に触れようと布団に手を伸ばし、引っ込める。優太は知秋の悲しみを理解できないし、助けられない。それが二人の距離だった。
しばらく、間が空く。優太は知秋の部屋のカレンダーに目をやる。知春が書き込んだ日没時刻が本当ならば、まもなく日没。知秋と話せる時間は残りわずかしかない。
「知秋、寂しかったのか?」
時間は限られている。優太はさっきまでの美紗との会話を思い出しながら、知秋に話しかける。何も出来ないけど、知秋に幸せになって貰いたかった。
「うん…。」
知秋は布団を被ったまま応える。
「じゃあ、待てば良かったじゃないか。」
「無理。」
「何で?」
優太が聞くと、知秋は少し布団から顔を出した。髪が涙で顔にへばりついている。
「迷惑だもん…。」
「何で?」
「人間じゃないから。」
「知春に交代するのが心配だったのか?」
「違う…。」
知秋は布団から勢いよく起き上がる。
優太は少し動揺する。
「あまり仲良くなっても仕方ないの。あたし、人間じゃないから、いつまでこの生活できるか分からない…。」
知秋は体育座りになると膝に顔を埋めた。早く楽になりたかった。優太は自分が人間じゃないことを知っている。傍にいることはとても有り得ないことで、とても奇跡で、いつかはそれは失われてしまうのだと知秋は思っていた。だとしたら、早い方が良かった。
「そういう中にあたしはいるの。」
沈黙に知秋の必死に泣くのを堪えている息遣いが聞こえる。
「あのさ…。」