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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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そらのわすれもの6

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夕暮れ時、知秋のアパートは薄暗かった。優太は息を切らせながら何とも言えない気持ちで知秋の部屋の前に立つ。
(間に合わなかったかな…。)
時計を見て、 少しうなだれる。しかし、別な場所で過ごそうと視線をあげると、少しだけドアの取手が下がっていることに気が付いた。扉に少し隙間が空いている。
優太は扉を開いた。
部屋の中は明かりが付いている。
「知秋?」
優太は声をかける。しかし、知秋の姿は見当たらない。ただ、少しだけベッドの布団が盛り上がっている。優太は一瞬戸惑ったが、意を決して知秋のベッドに近付いた。
「知秋?」
布団が小さく小刻みに揺れている。
優太は布団を捲った。捲らないといけないような気がした。

そこには、少しすすり泣いている知秋の姿があった。

「見るな…。」
知秋はうつ伏せになり、顔を隠す。
泣いている姿を見られたくなくて、一生懸命呼吸を整えようとする。
「何で泣いているんだよ。」
優太は布団を知秋の肩の辺りまでかけ直して聞く。
「聞かないで…。」
知秋はうつ伏せになったまま、布団を少し蹴り飛ばす。
「まあ…いいけど、鍵はかけた方がいいんじゃないか…半空きになっていたしさ…。」

知秋は優太の帰りを待っていた。寝る時間になっても諦めきれなくて、扉を開けて待っていた。

本当は時差で嫌われたんじゃないのか。そう思うと涙が出て仕方がなかった。

でも、
同情されるのも、
拒否されるのも、
嫌だった。

「だって、英語の補修終わったら、すぐに来るって言った。入って来やすいようにしてただけじゃん。」
少し本音を混ぜながら、肝心なところを隠して知秋は言い返した。
「だとしても、危ないだろ。女の子なんだからさ…」
優太が言いかけると知秋はまた布団を被る。普通の女の子扱いしてくる優太の言葉が嬉しくて、でも、痛かった。

それはまだ本当の自分を受け入れられていない証拠に他ならなかった。これからも、この不安を持ち続けなくちゃいけない。それを思うと知秋は胸が痛かった。

だから、結論を急ぎたくなって、ついつい試したくなってしまう。理性と裏腹に言葉は気持ちに忠実になる。