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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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そらのわすれもの6

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3-2


校舎裏に行くまで、美紗は無言だった。
あまりにも空気が重いので、優太は黙って美紗の後を付いていった。
校舎裏に着くと美紗は辺りを見渡し、結局単刀直入に言おうと決め、優太に聞いた。
「中川くんは、知秋と付き合ってるの?」
「いや…。」
「 こないだ夜、知秋と歩いていたのを他の子が見てる。」
知春といるところを誰かに見られたんだと優太は思い、固まった。
「好きなの?」
優太はどう答えたらいいのか悩んだ。その顔を見ると更に美紗は表情を曇らせた。
「軽い気持ちなの?」
「いや。」
優太は動揺がばれないよう淡白に応える。あれは知秋の妹だと説明したいが、今更遅い。美紗の様子を見ると、とても言えそうにない。
「やめてあげて欲しい…。」
「何を?」
とにかく、慎重に会話をしようと優太は聞き返す。

「知秋に生半可な気持ちで優しくしないであげて欲しい。この間、知秋の妹に会ったんでしょ?私たち、かなり長く付き合っているけど、そういうこと話して貰ったことない。」
美紗は自分のセーターの端をぎゅっと握り、うつ向いた。心配と嫉妬。複雑な気持ちでいっぱいだった。
「知秋は、見た目綺麗だよ。背も高いし、色も白いし、足も長いし…。」
どんどん声が小さくなっていく。優太は目のやり場に困り、美紗の頭を眺めた。 髪の生え際が黒くなっている。
「丸井って染めてるんだな?」
少し場の空気を和ませようと思い、優太は話題をふった。
「そうだけど?なんで?」
美紗は頭に手をあてた。
「いや…真面目そうなイメージだったから意外だった。うちの学校毛染め禁止だし。」
美紗の制服は学校のパンフレットにでも載りそうなくらい校則に忠実だ。知秋の着崩した制服の方が見慣れている優太にはそれは一層際立って見えた。だから、意外だった。
「髪、知秋に合わせて同じ色に染めてるの。」
美紗は恥ずかしそうに髪の根本を押さえながら、優太に言った。優太はその言葉に胸をうたれ、美紗を見た。
「らしくないなぁって思う。でも、知秋にひとりじゃないって思って貰いたくて…。」
美紗は少し寂しそうに笑う。そして、悲しそうに優太を見る。
「中川くんはどれくらい知秋のことを知ってる?私と同じくらいの覚悟がある?」
優太はその言葉を聞くと、何とも言えない気持ちになった。自分には美紗のように自分を曲げてまで知秋を気遣う覚悟が今は少なくともない。でも、そこまで知秋を思っている美紗は知秋の正体を知らない。それは酷く悲しいことだった。
「覚悟って…。」
それ以上言葉が出なかった。

さらさらと木の葉が掠れる音が真上から聞こえる。空気が少し冷たくなっていた。

「知秋を裏切らない覚悟ある?」

美紗は真っ直ぐ優太を見る。