慟哭の箱 4
面と向かって、大人とこんな会話をしているのがなんだか不思議だった。
「俺からしたらジジイだよー」
「失礼だな。そういえばおまえは何歳だ?」
「俺?二十四」
「へえ。それぞれに、性別も年齢も違うんだな」
とろんと眠そうな声が返ってくる。明日も仕事があるだろうに。
「つうか家帰ってきたら着替えたら?ずぼらだよ刑事さん」
「そういえばそうだな」
ちゃんとすれば絶対もてるのに。もったいない。
「彼女いる?」
「いるように見えるか?」
「忙しそうだもんねえ」
「俺は結婚には向かない男なんだ」
「あっ、そー言って振られるんだ?」
「……」
「ご、ごめん。図星だったね…」
「そんな本気で謝られると傷つくんだけど…」
同じ理由で、きっと複数回振られているのだと真尋は確信する。なんだかおかしな大人だな。真尋のような若者のふざけた言葉にも、ちゃんと返事を返してくれる。