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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 4

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勝手知ったる台所でコーヒーを淹れながら、真尋は一弥に言われたことを思い出していた。

(あの刑事さんが裏切るって…一弥は確信しているみたいだ)

本当にそうかなあ、とフィルターに湯をそそぎながら考える。あの清瀬という刑事が、他人の心を踏みにじるような人間には見えない。少なくとも、これまで旭の周りにいた大人とは絶対的に違う人種だった。

(あのひとなら、俺たちを助けてくれるんじゃないかなあ)

そんなことを思う。だけど一弥は肯定しないだろう。

(俺の意思じゃあ、どうにもならないか…)

カップを二つ手にして部屋に戻ると、清瀬がデスクで考え込んでいた。

「ん」
「ああ、すまんな。ありがとう」

カップを受け取り眉間をもむ彼の顔には、濃い疲労が見られる。しわくちゃのワイシャツ姿。帰宅して休む間もなく資料を読んでいたのだろう。

「ちょっと休憩したら。風呂でも入ってさ。若くなんだから無理しちゃだめだよ」
「若い。まだ三十四だ」

少しむっとした風にコーヒーをすするのがおかしかった。自分自身に無頓着な印象を受けたが、年寄扱いされて怒っているようだ。なんだか愉快な気持ちで、真尋はベッドに腰掛けてコーヒーを飲む。

作品名:慟哭の箱 4 作家名:ひなた眞白