慟哭の箱 4
いいなあ、と沢木は肘をついて遠い目をする。
「なんかそういう老後に憧れます、俺~」
「何言ってんだ、若者」
次の休みに戻ります、と返信すると、しばらくして返事が届く。
『ちゃんと飯くえ。スマホにかえた。すごかろう( `―´)ノ』
つぼにはまったらしい沢木が肩を震わせている。
「面白いだろ?母もこんな感じ」
「いいなあ清瀬家。なんかあったかい」
「いつか遊びにこいよ。海も近いし、静かでいい町なんだ」
「夏にぜひ海水浴へ!」
海沿いの小さな町は、都会の喧騒も届かない。ご近所みんなが仲良しで、清瀬は梢とともに、そこでのびのび大きくなった。
「清瀬さんてどっち似?俺はカーちゃんってよく言われるんすよ」
それは沢木の放った、何気ない一言だったのだと思う。しかし清瀬には重く響く言葉だった。
「どっちにも似てない…家族の中で俺だけは、血が繋がってないんだ」
清瀬は、清瀬家の本当の子どもではない。本来なら、梢だけが両親の子だった。
「えっ、あ…」
「俺は小学生の三年生かそこらで、清瀬家の養子になったんだ」
「俺、すみません…変なこと、聞いて」
青ざめてしまう後輩に、清瀬のほうが申し訳なくなる。