慟哭の箱 4
「なんとかならんのかね」
「なるもんならやってる。でも、あの子の中にある不安の根っこは想像以上に深い」
事件を解決したい気持ちは野上とてわかる。世間の注目も高いし、市民も不安の中にあるのだ。だが一人の医師としてあるのは、あの子の根っこを掘り下げて、そこに巣食うものを取り除き、健全に空へとのびていくように助けたいという願いだけ。
「清瀬のやつも入れ込んでてなあ…今日はさすがに現場に呼び戻されとるがね」
「…あの刑事さんって、どういう経歴の人間なんです?」
「は?」
秋田は不思議そうに眉根を寄せる。
「…入れ込むっていうより、すごい執念を感じるんです。清瀬さんから」
ふうん、と秋田は腕を組む。
「俺もあいつと組んでるわけじゃねえし、でも古参の連中の間では有名だな。本庁の刑事課のエリートだったんだ。いろいろあって、左遷させられたっていうけど」
いろいろ?警視庁の人間が地方の本部にとばされるなんて、何があったのだろう。
「取り調べ中にぼこぼこにしたらしい。子どもを虐待死させたあげく、遺棄したバカ親をさ」
「は?」
あの穏やかな清瀬が?