小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

慟哭の箱 3

INDEX|8ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

真尋



夕刻。清瀬は定時に職場を抜けて自宅へ向かっていた。少しでも桜に会いたかったのもあるが、今朝の旭が心配だったからだ。野上の話を聞いたらなおのことだった。

「ただいま」
「お兄ちゃん、」

梢がほっとした表情で玄関へ駆けてくる。

「すまん、全部まかせて。須賀くんは?」
「桜を寝かしつけてくれて…いま一緒にお昼寝中」
「もう六時になるぞ」
「結局三時くらいに寝て。もう起こさないとね」

梢が簡単な夕食を作ってくれた。清瀬は寝室で眠る旭と桜の寝顔を確認してから、食卓についた。温かいスープとおにぎりを、ありがたくいただく。

「…あのね、さっきちょっと変なことがあって」
「うん?」

いつも溌剌とした表情の梢が、不安そうに切り出してきた。どうしたというのだろう。

「須賀くんが突然、女の人になったの」
「――は?」
「わかんないの。女のふりをしてたとか、演技してたとかじゃなくて、突然女の人になって、自分は氷雨だって…そう言うのよね…」

まさか、人格が入れ替わった?
詳しく聞けば、子どもの話をしたり、自分は旭や涼太なる人物の母親代わりだとも言ったのだという。

「わたしどうしていいのか、わかんなくって…」
「…そうか」
「でも怖い感じはしなかった。優しい目をして…なんだか大人っぽくて…うまく言えない」
「いいんだ。あんまり気にしないでおこう」

野上との話は他言無用なのだ。しかし梢の報告は、旭の中の他人を認識するきっかけの一つとなりそうだった。


作品名:慟哭の箱 3 作家名:ひなた眞白