慟哭の箱 3
氷雨
「ん、なに…痛い…」
顔に何かチクチクしたものが当たっている。旭は手でよけながら目を開ける。
「あっ、おきたよーぅ」
「えっ」
顔を覗き込んでくる、小さな女の子。顔にあたっていたのは、二つにくくった髪の毛だったようだ。
「須賀くん、ごめんね起こしちゃって。だめじゃない桜ったら」
「こ、梢さん?」
清瀬の妹と。そして。
「娘の桜よ。お兄ちゃんから連絡をもらってきたの」
「おじちゃんはー?」
「おじちゃんはお仕事よ」
ああ、清瀬が言っていた姪っ子か。旭はソファから身体を起こした。
「清瀬さんから聞いています。すみません、わざわざ来ていただいて」
「いいのよ。仕事も休みだったから、どうせ桜を連れて掃除にこようと思っていたの。ごはん、食べられる?」
聞かれて壁の時計を見れば、昼の二時を過ぎたところだった。
「はい…おなか、減ってます」
「よかった。桜も手を洗っておいでね。桜はおやつよ」
「はーい。おにーちゃんも一緒にいくー?」
桜ににこっと笑いかけられ、旭も頬が緩んでしまう。
「うん、行く」
「お手てゴシゴシこっちだよー」