慟哭の箱 2
昨夜、襲撃後目覚めた清瀬は、真っ先に旭の無事を確認した。その後、襲撃者を追うため、ここに立った。そして扉をあけて玄関の周りの様子をうかがった。いない、と安堵していたが、それは違う。
あのとき、自分はかかっていたチェーンを外して外を見たのだ。それは確かだ。だって、慌てていたあまりチェーンがうまく外れず舌打ちしたのを覚えているから。
外側からはチェーンがかからない。つまり。
(部屋からは、誰も出ていない・・・?)
襲撃者は、どこから逃げたのだ?ここは三階、窓から脱出した?方法はなくもないが、考えにくい。何より、家中の鍵は、窓も含め閉まっていたはずなのだ。
「清瀬さん」
「あ、すまん。なんでもないよ」
沢木の呼びかけで我に返る。嫌な汗が背中に伝うが、沢木にこの不安を告げる気にはなれなかった。