慟哭の箱 1
「おはよおごじゃいます・・・」
徹夜のまま、病院から直接職場へ向かうと、同じく寝不足の沢木がふにゃふにゃ挨拶をくれた。
「沢木、少しは眠れたか」
「じぇんじぇん・・・清瀬さんは病院にいたんスか」
「うん」
結局、なんの情報も得られず、旭に会うことも叶わなかったが。
「清瀬さんは、どうしてそこまでこの事件を――」
「おい清瀬」
沢木の言葉に被せて、班長の声が届いた。
「おはようございます」
「おう。一課の秋田からの要請で、おまえを朝霧山殺人の捜査に加えることになったそうだ」
「は?」
「なんでも重要参考人が、おまえをご指名らしいぞ」
旭が。
「しかし、こっちはよろしいのですか」
「沢木に二人分働いてもらう。行ってくれるか」
「勿論です」
願ってもいない展開だった。これであの事件を公に捜査できるというものだ。
「本庁でのおまえの活躍を聞いているから、上も期待してるんだろう」
「・・・・・・」
とにかく病院に向かわねばなるまい。清瀬はコートを羽織ると沢木に手を合わせる。
「そういうわけだから、すまんな沢木」
「しゃーないですね。今度奢ってくださいよ」
「喜んで」
署を飛び出し、病院へ向かった。