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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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とうめいの季節 3

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09.映画にみる心の在り方


瑞は芸能ニュースの次に映画が好きで、それも洋画が好きで、けっこうたくさん観ているらしい。ひとりで映画館にもでかけている。伊吹はといえば、まだアニメ映画を楽しめるお年頃なので、小難しそうな洋画はよくわからない。

そんな伊吹だが、今日学校の授業で観た映画がすごくおもしろくて、そのことを瑞に話してみた。

「知ってる?子どもが留守番してて、ドロボウをやっつける話だよ」

賢い子どもの話で、伊吹もクラスメイトも大笑いだった。悪い大人をやっつける様が痛快だった。

「知ってる。続編も面白かったな」
「俺、ああいう笑えるのなら好きだなあ。瑞の好きな映画ってどんなの?」
「ううん・・・いっぱいあるけど・・・」

殺し屋と女の子の話。歌もいい。
映画館のジジイの話。ジジイを慕って映画館に通う子どもが、伊吹に似てるぞ。
友だちと線路歩く話。歌もいい。
船から降りた事のないピアニストの話。音楽が素晴らしい。
まだまだあるぞ。優しい死刑囚の話に、マフィアの話、それから・・・

瑞が挙げていく映画は伊吹の知らないもので、聞けばどの話にもある種の悲しさや儚さがあるようだった。瑞の心のどこかに、そういった繊細な感情を受け入れて魂を揺さぶるような、そういう器官があるのだろうかと伊吹は思う。

(そういう感情は、どうやって育つのかな)

感性というのは持ち方も在り方もそれぞれであり、決して他人と同じ場面で涙するとは限らない。瑞の感性は、伊吹のものとは違う。おそらく、穂積のそばにいたことの影響が大きいのだと思う。瑞の趣味というのは、穂積のそれに近いのだろう。

「趣味とか好みって、そのひとの性格をあらわすよねー」
「そういうものかな」
「そんな気がするなあ」

瑞は、人間の感情に疎いかもしれないが、悲しみやせつなさといったものに強く共感するのではないだろうか。それが何に根ざすものなのかはわからないけれど。

「自転車で空飛ぶ話とか、車で過去にタイムスリップするのも好きだな」

瑞はそういって目を細めた。

(自転車で空飛ぶ?タイムスリップ?)

好みがその人物の内面をあらわすというのならば。
この式神は、意外とロマンチストなのかもしれない。

        
He`s favoreite!
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作品名:とうめいの季節 3 作家名:ひなた眞白