生と性(改稿版)
この時の恵美の顔は小悪魔のような顔をしていた。竜二は「ふう」とため息をつくと、身を捩った。だが、玩具の手錠はそう簡単には外れない。竜二はしばらくもがいた後、おとなしく身を投げ出した。
「あれは俺流の愛し方だったんだ」
「何ですって?」
「俺は小さい頃、親から性的虐待を受けて育ってきた。だからこんな性格になっちまったのさ」
「だからって女の人を手篭めにするようなことが許されて?」
「俺にはあんな愛し方しかできねえんだ。もともと俺は金輪際、出てこまいと思っていたんだがね。あんたがまた俺を呼び戻しちまった。洋一の奴、苦しんでるんだぜ。俺が出てくる度に、あいつは辛い思いをする……」
恵美は竜二のその言葉を聞いて、愕然とした。恵美が洋一を襲うような真似をしなければ洋一は洋一で幸せな生活を営めていたのかもしれない。そう思うと、自分の取った行動の浅はかさを思い知る恵美だった。
「もう一度、あんたと繋がったら、俺は消えてやるよ。もう洋一を乗っ取ったりしない」
「その言葉に嘘はないの?」
「ああ、あんたには悪いことをしたと思っている」
恵美はバッグからコンドームを取り出す。そして、それを竜二のペニスに被せた。恵美は竜二の上に跨る。そして、自分の膣に竜二のペニスを宛がうと、「その言葉が聞きたかったのよ」と言いながら、身を落としていった。
恵美は一心不乱に腰を振った。薄いゴム沿いに肉が擦れる。激しく勃起した竜二のペニスは恵美の子宮を突き上げていた。
「あなたは消えるのよ。私の前からも、洋一の中からも、永遠に、永遠にね……!」
恵美の頬に一筋の滴が伝わった。竜二のペニスが脈を打って跳ねた。恵美の中で快楽とはまた違う、何かがはじけた。
竜二はぐったりとしていた。まるで深い眠りに落ちているようだ。その顔は安らかな洋一の顔に戻っている。その間に恵美はシャワーを浴びた。恵美がシャワーから上がっても、洋一はまだ眠り続けていた。
恵美は時計を見ると、洋一の身体を揺すった。すると洋一は目を覚ましたのだが、その顔は憔悴し切っていた。
「ああ、またあいつが、竜二が出たんだね……」
「竜二にちゃんと謝ってもらったわ。私は竜二を犯したの。これでチャラよ」
「竜二は何か言っていた?」
「もう、あなたが竜二に乗っ取られることはないわ。多分ね……」
恵美は洋一の手を縛っていた手錠を外してやった。
「さあ、行きなさい。あなたは洋一として歩いていくのよ。うつ病とも上手に付き合ってね」
恵美は着衣を済ませた陽一の肩をポンと叩いた。洋一が自信なさそうに笑った。
その日の午後七時。恵美は球磨川沿いの市営住宅に来ていた。美佐子の住む障害者用住宅だ。
「美佐子―っ、久しぶり!」
「あー、恵美―っ!」
久々の再会を果たした二人は抱き合って喜んだ。隆はそんな二人を目を細めて眺めている。美佐子は隆と一緒に入浴を済ませた後だった。
「恵美が障害者の『性介助』の仕事してるって聞いて、気になっていたんだ」
「私もこの仕事に生き甲斐を感じているのよ。相談してもらってよかったわ」
そう言う恵美の笑顔はさっぱりとしている。
「じゃあ、早速お願いします」
隆が恵美をベッドのある部屋に案内する。美佐子も車椅子を漕いで後に続いた。
「さあ、二人とも服を脱いで」
隆が美佐子の服を脱がすのを手伝った。美佐子の脚はかつてバスケットボールをやっていた面影はなく、やせ細っていた。
全裸になった美佐子は少し顔を赤らめ、ベッドに横たわる。
「ほら、瀬谷君も服を脱ぐの。私は今までいろんな人をみてきたからね。大丈夫よ」
隆は気恥ずかしそうにズボンに手を掛けた。隆も服を脱ぐ。ここで愛し合う二人が全裸となり、神聖な愛の儀式を執り行う準備ができた。
「美佐子は下半身、全然感じないの?」
恵美が美佐子を覗き込みながら訪ねた。
「そうなの……。それが悲しくって……」
美佐子の目に薄っすらと涙が滲んでいた。恵美は隆の方を振り向く。
「もう何度かセックスはしたの?」
「うん、試みたんだけど、美佐子は何も感じないんだ。だから濡れなくて……。正直、挿入が困難なんだ」
「あなた治水事務所の職員でしょ。そのくらい考えなさいよ」
「は?」
隆は呆気に取られた顔をしている。隆にしてみれば、治水事務所に勤めていることと、美佐子とのセックスに何の関係があるのかわからなかった。
「いいわ。今日は私が『治水工事』をしてあげる」
恵美は隆に美佐子の上半身の愛撫を促した。隆と美佐子はキスをする。そして、隆は美佐子の乳房を愛撫し始めた。
「あっ、あっ……」
美佐子が喘いだ。美佐子は深く目を瞑り、必死に快楽に耐えているようだ。
「上半身は感じるようね……」
恵美は腕組みをして、隆が愛撫する様子を眺め続けた。
「ああ、美佐子……」
隆は唇を下半身の、美佐子の女の部分に移す。そこも丹念に愛撫していく。
「ダメ、感じない……」
美佐子が両手で顔を覆った。その両手で覆われた下には美佐子の悲痛な顔があるのだろう。だが、ここで諦めるわけにはいかなかった。
「嘘、感じるはずよ。瀬谷君は今、精一杯あなたを愛してあげているの。それを美佐子は心で感じなきゃダメ」
恵美にそう言われて、美佐子は顔を覆っていた両手を、ゆっくりと外す。
「あなたには子宮があるのよ。女としての『核』が……。そこは喜びを感じられるはずよ」
隆は精一杯の愛撫を続けている。
「ああ、隆……!」
「美佐子……、愛しているよ」
隆のペニスは勃起していた。美佐子の女陰は潤滑油を放ってはいなかった。そこは隆の唾液で濡れているだけだ。恵美は隆のペニスを見て言った。
「治水工事を始めるわよ」
恵美はバッグからローションを取り出した。
「それは何?」
美佐子が怪訝な顔で尋ねる。
「ローションよ。挿入する時、滑りをよくするの。今後、ローションを使うことを勧めるわ。買うのが恥ずかしかったら、サラダオイルでもいいのよ」
そう言うと、恵美は美佐子の女陰に丹念にローションを塗りこんだ。そして、隆のペニスにもローションを塗りたくる。
「そうね、無理のない体位と言ったら、やっぱり正常位かしら」
そう恵美に言われて、隆は美佐子の上に覆いかぶさった。
「挿れるよ……」
「うん……」
隆は美佐子の女陰にペニスを押し当てると、グイと腰を突き出した。
「入った、入ったよ……!」
隆が感嘆の声を漏らした。
「嬉しい。やっと隆と一つになれた。ねえ、突き上げて……。私の子宮を突き上げて……」
「よし!」
隆が腰を動かし始めた。規則正しいピストンのような運動を続ける。
「ああ、感じるぅ、子宮が感じるのぉ……!」
美佐子の両目から涙が溢れていた。その涙を見て恵美は、この仕事を続けていて良かったと思うのであった。
新城哲夫は裸身の恵美に組み付いていた。ベッドに横たわる恵美の上に覆いかぶさり、乳房を弄んでいる。
「ああ、お願い、吸って……」
恵美が甘えるようにねだった。すると哲夫は乳房の先端の突起物を口に含む。舌先でそれを転がし、丹念に味わう。
「ああぅ、いいっ……」