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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   15話   『生徒会主催 花見大会 後編』

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よく考えろ。俺たちは何をしにここまでやってきたのか…その目的を思い出すんだ。

うんうんと唸っていた俺だがそんなのとっくの昔に気づいていたので改めて極めて冷静さを保ちつつ凍弥に確認をする。

「なぁ凍弥、一つ聞いていいか?」

「ん、何だよ、春斗?」

俺たちの疑問もいざ知れず普通に返す凍弥。

「これのどこが『大変』なんだ??」

この中の代表としてまともな人間なら誰でも当然持つこの疑問を真意を凍弥に確認を要請した。そりゃそうだろう。大変だって言われて急いで来てみれば大変どころか嬉しそうに満面な笑みを全開で浮かべ、猫?を膝に乗せたりぎゅっとしたりと楽しそうに戯れているんだからな。これが大変??どこが??むしろ楽しそうに見えるぞ。俺でなくてもこの構図を見れば殆どの人が俺に賛同してくれるに違いない。

…そうだよな?
俺がおかしいっていうわけじゃないよな??

そんな自問自答を心の中で延々としている俺に凍弥はその口をゆっくりと開く。それもさもそれが当然のように。

「何を言いなさんな、ヒナタン。これを見ても十分、今の状況がいかに大変であるか物語っているかお前にもわかるだろう?って本当はわかっていて言ってるんだろ?おいおい、それは冗談が過ぎるぜ」

やれやれとオーバーに肩をすくみ、俺の言葉を冗談と疑う凍弥。…いやいや、マテマテ。

「わかるかッ!!そんなことよりもちゃんと説明しやがれッ!!この状況のどこが『大変』なのかを」

まったく、いつもながら話を聞かんヤツだ。

「どこがってよ。会長がこんなんじゃ例の企画の準備が先に進まないうえに終わらない。それどころか企画自体始められないじゃないか。な?十分大変なことだろう?」

それがさも重要性大かを俺に同意を求めるかのように語ってみせる。

「ってやっぱそっちのことかよッ!!そんなもん全然大変じゃねぇし、そのわけのわからん謎企画が出来なくても誰も困らん。むしろ、中止にしろそんなもん」

俺は言ってやった。皆のため、そして、ここにいる俺とそこで未だにフリーズが解除できていない2人のためにも。

「またまた~そんなご無体なご冗談を~。ヒナタンだって楽しみで仕方がないくせによ」

誰がありもしないそんな空想仮想物語のようなこと考えるか。むしろ、その企画を中止させたくて仕方がないぜ。…それとだ。さっきからツッコまなかったがヒナタン言うな。

「…まぁ、何もなかっただけよかったぜ」

俺はさっきまで考えていたそんな心配が思い過ごしであったことに安堵し、それと同時にやれやれと肩をすくませるのだった。

「…フン。ふざけおって。やはり、私の杞憂だったか。それなら心配する必要もなかったな。わざわざここまでやってきたのも無駄足だったよ」

ヒカリも俺と同じようなことを思ったようで、無駄足を踏んだことにご立腹のご様子でむすっとしていた。

「まぁまぁヒーちゃん。会長さんが無事だったことと安心だということが確認できたんですからいいじゃないですか」

ミナがヒカリを落ち着かせるために何とかフォローを試みていた。

「煩いッ!!どこがいいものかッ!!この私をここまで足を運ばせておいて何だこの有様はッ!!私を小馬鹿にしているようにしか見えん。ふざけるのも大概にしろ」

しかしミナのフォローも空しくヒカリの怒りに油を注いだだけであった。…ミナ、気にしなくてもいいぞ。こいつに何を言っても無駄だから誰がフォローしてもミナと同じ反応するだろうぜ。

「………」

そしてミナは、何も言わなくなりただ黙ってじっと立ち尽くしていた。
ほら言わんこっちゃない。そんなツンケン態度できつく言うから…かわいそうに。
でも、何かミナの様子がおかしいな。何がおかしいって特別あるわけじゃないがこれだけは言える。さっきヒカリに強く言われて何も言えず黙ってしまったのかと思っていたがそうではないようだ。だって、ミナの顔は悲しい顔っていうよりも何だかボーっとしているような顔だったからだ。

一体どうしたんだろうな、ミナ。ちょっと訊いてみるか。
俺はミナが呆然と立ち尽くしているのが気になってミナに訊いてみることにした。

「ミナ、どうしたんだ?さっきからぼーっとしているみたいだが何かあったか?」

「…え、あ、あの、すいません。私、ぼーっとしてましたか?」

俺が話しかけた途端びくっとして自分が今までぼーっとしていたことにも気づいていない様子だった。

「あぁ、何だかずっと姉さんの方をじっと見ていたようだったぜ。何か気になることでもあったのか?」

そう、さっきからずっとミナは姉さんの方をじっと見つめていたのだった。…まさか、あの猫?が可愛がられているのが羨ましいとか言うんじゃ…そんなことになったら姉さんの調教は見事に成功、姉さんの思い通りになってしまうが…。そんなことを心配しながらミナに流し目で視線を送ってみると、

「…え?あぅ、え、あの…ですね。会長さんが抱いている猫?さんなんですが私、見覚えがあるような気がするんです」

「そうなのか?」

「…えーと、はい。確証はないんですがこの猫?さん見てからどうも落ち着かなくて。どこかで…、それにこの猫?さんから微弱ですが魔力を感じます」

ミナは真剣な表情で考え込むような面持ちでその猫?を見据えていた。
でも、あの猫?から魔力ねぇ。…っていや待てよ。それじゃもしかして。

「まさか、ミナとヒカリが言っていたこの付近から魔力反応ってヤツを感じ取ったって言ってたよな。その根源ってその…」

「はい。おそらくこの猫?さんでしょう。私が感知した魔力反応とほぼ一致しています。ヒーちゃんもたぶん気づかれたと思います」

「フフフ。そういうことだ。この下等小動物に間違えないだろうさ」

ヒカリは扇子兼マジカルステッキをポンポンと手のひらに叩きながら、軽く笑みを浮かべこっちにやってきた。

「マジかよ。この猫みたいなものに魔力がな。俺には信じられん。まぁ、お前ら魔法使いがそう言うならそうなんだろうな」

残念ながら俺には魔力を感知することが出来ないんでね。まったく『鍵』っていう凄い(俺にはわからんが)存在のはずなのにロクに意味ないよなこれじゃ。でもまぁ、それならこの魔力を持つ猫モドキは…。俺はさっきヒカリたちが言っていたことを思い出し、気になったので訊かずにはいられず訊いてみた。

「それじゃこいつはあのバケモノたちと何か関係してんのか?少しだけど魔力があるんだろ?ってことはお前らみたいに魔法が使えるってことだからな」

ヒカリの言った理解の壁を大幅に超えた困惑フリーズ魔法かつ再起不能話を理解すら未だにあやふやだがこれだけは俺にも理解はできる。実際、この目で自分でも体験しているわけだからな。そう思いながらヒカリに視線を合わせる。

「ん?何だその呆れたような眼差しは。…まぁ、安心するがいい。こんな下等魔獣にそんな力はない。それに見た感じでは魔獣者とは関係はないだろうさ。このモノからは邪悪な魔力は感じられないのでな」

「そうなのか」

「そうですね、私もそう思います」

特に気にするような仕草も表情でもないヒカリがそう言うならそうなんだろう。