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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   15話   『生徒会主催 花見大会 後編』

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さっきより少しだけ笑みを取り戻したミナは、何だかほんの少し肩の力が和らいで、その瞳の向こうは嬉しそうに喜んでいるようだった。

「まぁ何にしてもその心配が杞憂だったに超したことはないのは確かさ。取り敢えず今回はこの私もいることだしどうとでもなるさ。どうせ魔力が低い下等小動物かなんかの類であろう」

「それならいいがな」

俺は魔力を感知すら出来ないからこれ以上何も言えないし、確かめる術もないからな。
まぁ、今回はミナとヒカリもいることだし大丈夫だな。

「でも、私、この魔力を知っているような気が…」

俺がヒカリと周囲を見渡していると、ミナが何やら真剣な表情で何か呟いていた。

「ん?どうした、ミナ?そういや、今、何か言わなかったか?」

「え?あ、いや、何でもないです!たぶん私の気のせいです」

「ん??そうか」

何だかわからないがまぁミナがそう言うなら気にすることはないだろう。
でも、一体俺の知らない何かが俺の知らない間に起こっているんだろうな。少なくともここにいる俺以外の皆に被害が及ばないようにしないとな。

「おーい!!ミナちゃん、ヒカリちゃん、それとその他1名何やってんだ?そんなとこにいないで俺たちとトランプやろうぜ!かえでと勝負しても勝負にならんし負けっぱなしなんだ。だから、皆でやろうぜ」

俺がせっかく真剣に考えているところに、自称、萌え戦士暁が手を振って呼んで、その隣でえらく勝ち誇ってにやにやしているかえでの姿があった。ついでに言うと茜はせっかくの花見だっていうのにごろ寝し、冬姫はまどかちゃんと何だか楽しげに話を弾ませているようだった。

…って、今、俺のこと『その他1名』呼ばわりしなかったか??

まぁ、トランプか。かえでの大好物かつ得意分野だな。実際、前に俺はかえでにトランプ勝負に負けて奢らされる破目を既に実証体験済みなわけだからな。それは暁でも当然勝つことは不可能に近い。でもまぁ、ずっとその得体の知れない何かを警戒しているよりか皆でトランプでもして気を紛らわせるのもいいかもしれん。

そう思うと俺は、不敵ににやりと微笑んでこう返事を返すことにした。

「上等だぜッ!!俺に勝負を挑んだことを後悔させてやらぁッ!!テメェら全員叩きのめしてやるぜッ!!」

威勢のいい声を高々と張り上げて闘争心を煽るかのように俺は力強い握り拳を作ってそう叫んだ。さらに、俺は続けて、

「しかーしッ!!ここで俺からの提案がある!!今回はお花見というイベントだ。それに、今回は初参加のミナとヒカリもいるわけだ。これがどういう意味があるかわかるか??」

俺は暁に向けて意味深な笑みを視線に籠めて送った。

「おうッ!!もちろん俺もその考えには同感だ」

俺のアイコンタクトが伝わったのか暁は俺と同様不敵に笑みを浮かべる。
そして、俺と暁は互いに頷き、かえでに視線を集結させる。

「???」

にんまり笑顔で何が何だかわかっていないのん気な表情なかえで。
その答えを俺と暁によって高々とその口から告げられることになるのだった。
それは…!!

「「賭け事は一切なしだぁぁああッ!!」」

「え~!!」

途端にこの世が終わったような願いが脆くも崩れ去ったような表情になっていた。
だって当たり前だろ。かえでがどうせ勝つに決まっているのに賭け事ありでは不平等なことこのうえ極まりない。

それに俺は、また同じことを繰り返すつもりはないし、わかっていて何もしないでワナに飛び込むお人よしでもない。だから、俺たちは回避する、ただそれだけだ。

だが、俺たちのこの心情を尻目に、

「情けないヤツだな。さっきまでの威勢のよさはどこへいったのだ??」

じとっとした瞳で俺を見据えるヒカリ。

「…あはは」

そして、苦笑いなミナ。

「これでいいんだよ。お前らもそれを身をもって味わうことになるだろうさ」

俺はミナとヒカリの二人の肩をポンポンと叩き、軽く微笑む。

「ほら、行こうぜ。せっかくの花見だ。姉さんたちじゃないが楽しもうぜ」

そう言うと、二人を連れて俺は暁たちのいる花見スペースに戻ろうとする。
しかし、そのときだった。

「春斗ッ!!」

生徒会主催による謎の企画の準備に行っていた凍弥が一人で急いで戻ってきた。
…何だ??忘れ物でもしたのか??
よく見ると、何やらマジに真剣な顔をしている凍弥。

「何だ?真剣な顔してよ。例の企画とやらの準備は終わったのか?でも、姉さんの姿が見えないってことはまだみたいだな」

俺はそんなことだろうと思ってやれやれと苦笑いを浮かべていた。
でも、凍弥の口から返ってきた答えは俺の考えるものとは予想外なものだった。

「会長が大変なんだ」

「は??それはどういうことだ??」

突然、妙なことを言いやがった。姉さんが大変??何がどう大変なんだ??

「俺だけではどうすることもできん。春斗、お前も一緒に来てくれ!!この間にも会長は…。事は急を要する、急いでくれ」

いつになく真剣な凍弥。…まさか、さっきヒカリたちが言っていたことが関係しているのか。それなら本当に大変な事態到来だ。

俺はヒカリとアミーナに向き直ると、

「行きましょう、ヒナちゃん。本当にもしそれが本当だったら大変です」

「フ…。そうだな。真偽は定かではないが厄介なことに発展しても面倒だ」

二人とも俺と同じことを考えていたようだ。それなら話は早い。

「わかった。急ごうぜ」

「よし、こっちだ」

俺たちは凍弥の向かう方について行く。

「っておい!!お前らどこ行くんだ??トランプは??」

「すまん、中止だ。またかえでと楽しんでいてくれ」

「そんなぁ~。美女に囲まれて仲良しルンルン計画in花見が…」

がくっと肩を落とす暁にそう言って、俺たちは急いで姉さんがいる場所へ向かった。





「………」

「………」

「………」

俺たち3人は仲良く二の句を告げられず呆然唖然にただその光景をぼーっと見つめ棒のように黙って突っ立っていた。そう、あれから俺たちは凍弥に連れられて大変なことになっているという姉さんの謎な緊急速報を受け、ヒカリたちが気にしていたことに関係するやもしれんと思い急いでその現場にやってきたわけなのだが…。

このように大変な事態になっていることになっているその今回の原因の根源でもある姉さんを見つけ、駆け寄った俺たちはこうして仲良くフリーズしたわけだ。なぜ、俺たちがこのような事態に陥ったのか?そろそろ皆さんも気になっている頃であろう。

それは…。

俺は、フリーズ状態から何とか脱出を試み、もう一度姉さんに視線を戻す。

「えへへ♪♪♪」

どういうことだろうか何だろうか一切俺たちにはわからんが、姉さんはさっきまでミナとヒカリに向けていた極上会長スマイルを更に凌駕し、まるでとろけそうなチーズのようなにやけ顔で猫?を可愛がっていらっしゃった。姉さんってば俺こんな嬉しそうな顔する姉さんは初めて見ましたよ。これはきっと希少価値に匹敵するんじゃないでしょうか。かえで風に言えばレアだな。

…ってマテマテ。
ナニ現実逃避かましてるんだ、俺。そうじゃないだろ、