第1章 15話 『生徒会主催 花見大会 後編』
それにミナもそう言っているからな。これは信じないわけにはいかんだろう。
「………」
でも、安心させる言葉を俺にかけてくれたミナただ一人はまだ何やら気になるような釈然としない面持ちで考え込んでいた。…ホントどうしたんだ、ミナ。
「なぁミナ…」
と俺が心配になりミナに話かけようとしたその時だった。
「…うぅん。ふにゃぁぁあ~わぁう…」
姉さんの抱いていた猫モドキが欠伸のような声を洩らしていた。…なんだ、この猫?
寝てたのか。よくもまぁ姉さんにあんだけ可愛がられてたのに寝ていられるもんだ。
「あら♪♪この娘目が覚めちゃってくれちゃったよ♪♪きゃぁあん♪♪もうこの愛くるしい顔に可愛い仕草ったらないわね~♪♪よしよし~撫で撫で~えへへ♪♪」
姉さんは言うまでもなくその仕草に一発で撃沈されたご様子で可愛がるのを再開させたようだ。…ってよく飽きませんね。
「うにゃぁッ?!な、何ですの?!あの、ちょっと止めてくださいですの~!!くすぐったいですの~」
「えぇ?!あなた、ミミル?ミミルじゃないですか!!」
姉さんに大いに可愛がられているその猫モドキの声を聞いた瞬間、ミナの表情が一転しその猫モドキのところに駆け寄っていった。…ってこの猫しゃべりやがった。あっちの動物はもしかしてみんな話ができるのか?
「え?…あ、あ、あぁぁああ~ッ!!ご主人様ぁあ~ッ!!」
ミミルと呼ばれたその猫モドキはこれまたミナといい勝負の身長な少女であった。
…なんだ、あの耳といい尻尾は飾りだったのか。ついでに鈴も。というとアレか所謂、猫耳少女というやつだな。よくもまぁこんな恰好して恥ずかしくないもんだ。それにご主人様って…。
うーん、暁とかえで辺りはもの凄く食いつきそうだな。そういや前にも暁が、
「三種の神器…これは未知なる桃源郷への第一歩ッ!!本来は猫に備わっている特徴的部分なのだが、それを高く分厚い常識の壁を飛び越え我ら同志の誇るべき先人と言っても過言ではない素晴らしき同志諸君によって創造、そして、欲望によって生み出されたッ!!それが、この三種の神器なのだッ!!想像してもみろ。猫耳、尻尾、そして、可愛らしい鈴…それらを可憐なる無垢しか知らない少女たち…いや、妖精たちが身に纏うことにより大いなるかつ圧倒的なまるでキューピットが矢を射るが如くその矢で人々を虜にするだろう」
んでもってそれに続いてかえでが、
「さらにさらにだよ☆ここで忘れちゃ~いけない重要ポイントッ!!もし、ここでこれを忘却の彼方に身を投じ、実行しないでいる邪道上等ヤロウがいたらこのあたしが矯正(強制)修正してやるから覚悟するようにネ☆そのポイントとは…そう、本物の猫になりきり、語尾に『にゃん』付けで演じることにより一層萌えパワーが充填され、どんな物理法則でさえ遥かに凌駕しその常識という名のでっかい壁をぶち壊すのだぁッ!!」
とか何とか馬鹿話を聞いたんだよな。
ホントあいつらの将来が恐ろしく心配になってきたぜ。…いろんな意味で。
おっと話が脱線したな。軌道修正して…と。よし、さっきの時間に戻ろうか。
そのミナがミミルと呼んだ少女はまるで生き別れていた姉妹がやっと再会したような笑顔と涙に満ちた表情で姉さんの呪縛から抜け出し、こっちに向かって一直線にパタパタと駆け寄ってきて輝かしいばかりの感動のご対面の瞬間のようだった。
「ミミル…ってあれ?」
てっきりミナとの感動の再会を果たすものだと思っていたミナを含め俺は、その猫耳少女ミミルがミナの横を素通りしたのを見届けると、頭には数え切れないクエスチョンマークが展開され、ただ呆然と立ち尽くしてしまっていた。しかもそれが俺のところに向かってやってきたことでより一層謎が深まることになるのだった。
<次回へ続く>
作品名:第1章 15話 『生徒会主催 花見大会 後編』 作家名:秋月かのん