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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   15話   『生徒会主催 花見大会 後編』

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姉さんは途端にしどろもどろに慌て始め、あくまでも自分は知らないと言い張っていた。
…姉さん、それ全然説得力ないです。それに目が泳いでいますよ。
すると、状況を察したのか凍弥が俊敏な動きでこっちにやって来ると、

「おっと、ヒナタン先走らなさんな。そんなに先走ると嫌われちまうぞ~。それでは会長、そろそろ準備しましょうか。お姫様の荷物も揃いましたのであとは調整だけです」

「そうそう、そうだったよね~♪それじゃハルくん、お姉ちゃん準備があるからごめんね~」

早々とそう告げると、凍弥と共にもの凄いスピードでこの場を後にした。
…何なんだ、一体。

まぁどうせロクなことじゃないんだろうな。俺の予感がそう告げる。
だってあの生徒会、姉さんと凍弥のすることだからな。
半ば諦めもついているが、でも、やれやれと肩をすくまさずにはいられない。

「…ヒナちゃん」

ミナの声がしたので視線を向けると、いつもの向日葵笑顔が一転し、悲しそうな顔でちょこんとそこに立っていた。すると、ミナはゆっくりと口を開け、

「すみませんでした。私が生徒会に入るなんて言い出したせいでヒナちゃんにご迷惑をかけてしまいました」

ぺこりと頭を下げるミナ。

「いや、ミナのせいじゃないって。それに俺は迷惑なんかしてないぜ」

「…え?」

ぴょこんと顔を上げ、俺の方に向き直るミナ。

「確かに突然のことで驚いたりはしたが、俺はミナが手伝いたいって言ってくれてその気持ちはもう心の底から嬉しかったぜ」

「…ホントですか??」

「あぁ、ホントだ。ヒカリはともかくミナの気持ちが嬉しかったのは確かだ。それに非常識な連中ばっかだからな。ミナみたいな普通の会員なら俺は大歓迎だ。ありがとうな、ミナ」

俺はそんなミナが微笑ましくなっていつもよりサービスでわしわしと頭を撫でてやった。

「…えへへ。ヒナちゃんがそう言ってくれて嬉しいです」

ようやく曇っていた表情から向日葵笑顔を取り戻したようだ。

「…フフフ。アミーナよ、この私もいることも忘れないことだな。貴様なんか歯が立たないくらいひーんひーん泣かせてやるから覚悟することだな」

ヒカリは不敵に微笑みながらそう言うと、ちょこんと座って再びぬるくなったお茶を飲み始めた。…何だかむすっとしていたような気がするのは見間違えか?まぁいいか。そんなことよりこれから起きる謎の生徒会の企画の対策会議を行う必要があるからな。さて、どうしたもんかね。

俺は、その例の企画とやらが始まるまでそんなことを考えるのだった。




「………」

姉さんと凍弥が謎の企画とやらの準備をしに行ってから数分たったのだが、その間に何やらさっきまでいつものツンケンフェイスだったヒカリなのだが時より何かを気にするような仕草をしたり真剣な顔で考え込んだりしていた。

…何だろう。ヒカリも気になっているのだろうか例の企画について。でも、そんな風には見えないんだが、どうしたもんだろうか。まぁ、ほって置いてもいいとは思うがここは一応聞いておいた方がよさそうだな。っていうか俺が気になるし。

そう思うと俺は、すぐに行動に移しヒカリに近づいていく。

「なぁ、ヒカリ」

「ん?あぁ何だ貴様か、何だ??」

俺がヒカリに話しかけると考えるのを止め、こっちに視線を向けた。

「いや、何だってさっきからずっとヒカリが難しい顔して考え込んでいるみたいだったからさ。何かあったのかなって」

「フフフ。何だ、私の心配をしてくれているのか?」

不敵ににやりと微笑むヒカリ。

「ん、あぁ、まぁな。何だかいつもとは様子が変だったからな」

「フフフ。貴様にもやっと私の魅力に気付き始めたとはな。どうやら私の努力もそう無駄ではなかったようだ。これはメロメロになるまでそう遠くはなさそうだな」

「いやいや。そういうことではなくてだな」

「何だ違うのか。それは残念。フフフ…」

俺の顔を見つめて何やら悪戯好きの子猫のようににやにやと微笑むヒカリ。
その顔を見てると全然残念には見えませんよ、ヒカリさん。

「まぁそんなことはどうでもいい。それで、どうしたんだよ?」

「フン、まぁいいだろう。でも、大したことではない。というかまだ私にも不確かなのだ」

「そうなのか?」

「昨日の夜頃からなのだが微弱にこの付近から魔力を感じる…気がするのだ。気がするというくらい本当に微弱で不確かな感じなのだ。だから、別に気にすることもないと思っていたのだがな、何だかこの前の魔獣者の出現と関わりがあるかもしれんのでな」

「そうか。だから、不確かだが一応警戒しておいた方がいいのか考えていたのか」

確かにまたいきなりあんなバケモノに襲われては俺も困るからな。
っていうか絶対ごめんだぜ。

「あ、あの」

俺とヒカリが話しているとそれが気になって心配になったのかミナが控えめな動作でちょこんとやってきた。

「ん?どうしたんだ、ミナ?」

「私もヒーちゃんと同じで昨日からずっと気になっていたんです」

途端に真剣な瞳で見つめるミナ。

「フン。まぁ貴様もフォーリアの魔法使いに加えてフィーアの娘だからな。それぐらい感知することぐらい造作もないだろうさ。だが、それを言いにわざわざやってきたのか?それなら邪魔だ、あっちへ行っていろ」

不敵に微笑んだかと思ったら、途端に冷徹な有無を言わさんとばかりの瞳でミナを追い返そうとするヒカリ。…まったくヒカリは。いきなりそれはないんじゃないか?まだちゃんとまともに話しすらしていないのによ。

それに前にも言ったと思うがこの娘はお前と違って神経が図太くないんだからそんな顔でそんなこと言われたらもう何も言えなくなっちまうだろうが。ミナはか弱いんだからな。まぁここは俺が言った方がいいだろう。っていうかこの中で言えるのは俺ぐらいなもんだしな。

「まぁそう言うなって。別にミナは何もしてないんだからさ。そうだろ??」

「…うむ。まぁそうだな」

「だろ??ならせめてこういう時くらいは普通に接してやれよ。敵対してるって言ったってここは虹ヶ坂市だ。フォーリアでもシェルリアでもないんだからさ」

「…ヒナちゃん」

俺は珍しく熱心にヒカリに説得するのが自分でも驚くべきことで、それをむすっとした顔をしながらも俺の言葉に耳を傾けるヒカリもまた俺にとってはここ数日間と出会いは浅いが初めてのことだった。それで何とか俺の言うことを理解してくれたのか、

「…フン、わかったよ。でも、期待しない方がいいぞ。別に私はお前の言うことを理解したわけではない。ただ、少し…いや、ほんのわずかだけ検討してやってもいい程度のこと、それだけだ。いいな?」

むすっと何だか面白くないって顔しながらも一応は伝わったようだ。
…ホント素直じゃないな。
まぁ、ヒカリにしては敵対関係にあるのだから中々難しいんだろうな。
だから俺は、ヒカリに視線を向けると軽く微笑みながらこう言った。

「あぁ、それで十分だ」

「フン!!」

ヒカリは鼻を鳴らすとそっぽを向いた。

「ありがとう、ヒーちゃん。それにヒナちゃん」