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それでもいつか遠くの街で

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時刻通りに 新幹線のぞみがホームにはいってきた。
後ろからサラリーマンらしい男性に押されながら車内に乗り込むと 指定された席をめざした。
まだ、人の匂いの薄い車内は、心地よく感じた。
「さてと 三時間半の旅 始めますか」
やや曇り始めた空を車窓から見上げ、走り始めた。列車は博多駅を出発して 小倉 広島 岡山 新神戸 新大阪 京都 名古屋へと向かう。空の便ならもっと短時間で低料金だってできる。乗り始めたときは そんなふうに思った。
空の色が変わり、景色が変わり、記事で出逢う人たちの話に出てくる情景が過ぎていく。
此処で降りたら あの子かな。次はあの子の街だ。突然、行ってみようかな。偶然会ったりしないかな。
停まる駅。通り過ぎる駅。そして 到着する駅。

車内の暖かさに缶ビールを飲み、トンネルで窓ガラスに映った自分の髪型にちょっと整えた。少しずつ、期待のような無茶なような若かった頃の気分がしていた。
「あ、、、」
一瞬で不安がよぎった。
本当に相手は来るのだろうか? もし来たとして 僕のことを見つけられるのだろうか?
妙な汗が掌に 滲んできた。
車内の放送が まもなく名古屋駅に到着することを伝える。あ、次は英語でのアナウンス。
どうする?
どうしようもない不安が 期待以上に胸の中に蔓延る。
名古屋の高層ビルが見えてきた。ホームに入っていった。停車した新幹線のドアがシュゥーという音を立て開いたとともに キンコンキンコンとドアが開いたことを知らせる音が聞こえた。
「着いたか……」
人の流れに逆らわないように階段と並行してあるエスカレータに乗った。改札口に切符を通す。
それらしい女性の姿を探す。僕に見つけられるだろうか?
もしかして、彼女は 僕を見て帰ってしまうかもしれない。いや、特に異質な雰囲気は醸し出してはいないと思うのだが……、何処だ?
天井からの案内板についている時計を見る。

作品名:それでもいつか遠くの街で 作家名:甜茶