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それでもいつか遠くの街で

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こうした愉しい日々のやりとりに 若さをみなぎらせ、これからが人生の華期。
まだまだ萎れ枯れるなんてありえないと思うも 実年齢は 半世紀を過ぎていた。

季節は 晩秋…秋と冬とを跨ぐような頃。
【あぁ、季節も二股か】と題した記事を書いた。
『男と女の二股事情。ダブル二股のはずが 三つ巴だったよ(あちゃー)』
『あっちとこっちの宴会掛け持ち二股の男』
そんな切り口から 年末に控えたイベントへの流れ込みな記事。
『僕のエスコート。一緒に羽織りませんか? あ、一緒に出かけませんか? 』
『僕の息子も S(エス)サイズじゃありましぇん(笑)』
『熟姫様と過ごす めくるめくメイクラブ(迷倶楽部じゃないよん)演出致します』
戴きもののワインを ひとりで飲みながらパソコンの向こうの相手に話しかけた。
書き終え、ほかの会員の記事を読みまわる。自己ページに戻ると そこそこアクセスもあったが、返信をするコメントはなかった。
僕は、仕事関係のメールボックスをチェックしたが、早急な対応を要するモノはなくパソコンの前から離れた。

ワインの入ったグラスを持って ベランダに出た。
昼間のどしゃ降りで空が洗われたのか 夕方から晴れてきた空には星が見えた。

夜空に きらきらとした輝きを見つけじっと見つめる。なんとなく頭の片隅に甘い恋を浮かべて その雰囲気に浸る。唇にグラスを、そしてボジョレー・ヌヴォーを口に含んでゆっくりと喉に流していく。その香りが鼻腔に抜けていく。

「ぁあ、幸せだ。・・・・・って寒う」
これが現実かと 笑いが込みあげてきた。
夜空の星は静かにそこにある。吸い込んだ冷えた空気が ワインの香りを和らげ そっと消していく。ちょっとワイン越しに夜空を楽しもうか、なんてね。
見晴らしがいいかどうかはわからないが 僕は此処から見る景色が気に入っていた。
何処にいるのだろうか? 明日出逢う人。思い浮かべてもわかるわけはないのに 嬉しい期待が胸の奥を少し詰まらせた。
残りのワインを飲みほし、僕はやや肩をすぼめて部屋へと入った。

作品名:それでもいつか遠くの街で 作家名:甜茶