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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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風呂でぼんやりしながら、さきほどの光景を反芻する。天井を見つめていると、少しずつ記憶が蘇ってくるようだった。

(子どもを探してる男・・・父親)

それが時計男なのだ。そして彼に触れた瞬間に見えた景色。父を待つ少女。

(あの子は・・・父親が来るのを待っているのか。そして父親は少女を探している・・・)

すれ違う親子。互いが互いを探しているのか?

(あの海・・・美しかったな・・・)

夏の夕暮れの、沈み行く夕日。グラデーションの空。忘れられない。とても美しくて、同じくらい寂しい場所だった気がする。

「おい紫暮」
「ぎゃあっ!」

突然風呂場を開けられ、静寂が破られた。驚きで浴槽にかけていた足が離れ、ドボンと盛大に湯船へ落ちる。

「ゴホッゴホッ瑞ッ・・・!」
「どうした、溺れたか」
「風呂場を覗くな馬鹿者がッ!!」
「思春期か」
「そういう問題じゃねえだろ!!」

常識というものをもう少し身に着けて欲しい、と切実に思う。

「それよりこれ」
「・・・何だよ」
「さっき清香がくれた。あいつ、俺らのしてることなんて全部お見通しって感じ」

透明なファイルに入っている新聞記事のコピーだった。

「・・・舞鶴での交通事故?」

市外での交通事故の記事だった。小さくありふれた記事。

「三ヶ月前の事故の記事だ。亡くなってる。身元不明の男性、ひき逃げだって・・・?」

犯人は捕まっていないこと。搬送先の病院で身元不明の被害者が亡くなったこと。無機質な文字がそれを淡々と綴っている。

「これが・・・時計男に関係してるって、ばあさまは言いたいのか?」
「答えをくれないところからすると、お見通しだけどおまえの力で何とかしてみなさいってことだろうな」

清香は静観しているようだ。跡目である紫暮の力を試そうとでもいうのだろうか。

「俺からも一つ。あの時計男、目がなかったぞ」
「え?」
「眼窩がぽっかりあいてた。目がない。あれでは目が見えていないだろう」

目が見えていない?それは何を意味するのだろう。

時間を尋ね
子どもを探し
彷徨い続ける
交通事故で亡くなった、目の見えない男・・・。

(この事故のこと、もう少し調べてみるか・・・)

何かわかるかもしれない。重要なヒントを与えてもらったらしい。

「穂積が戻ってるぞ」
「えっ、そうなのか」
「仕事が一段落したようだ。明日はまた早いそうだけど」