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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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そばにいて




温かい。優しいぬくもり。まぶたを透かしている光の温かさにゆっくりと目を開ける。すがめた瞳に飛び込んできたのは、強烈なオレンジ色だった。

どこだろう、ここは。ひまわり畑だ。段々畑のように広がる広大なひまわり畑の向こうは、オレンジ色に照らされた海が見えた。水平線の彼方に、夕日が沈んでいく。

(夕焼けだ。きれいだな・・・)

紫暮はその光景に魅入る。美しい。まるで絵葉書の光景みたいだ。空の色はオレンジと、そこから派生するグラデーションに彩られている。ピンク、菫色が混じる美しい色合い。ひぐらしが鳴いている。海はきらきらと夕焼けを反射して輝いていた。

ここはどこだろう。見たこともない場所だ。

ふと気がつくと、紫暮の右手がささやかな体温に包まれていた。隣を見れば、少女が手を繋いでいた。小さい子だ。紫暮の腰の下あたりに頭がある。

「・・・きみ、誰?」

頭の後ろで一つにくくった髪が、さらさらと揺れている。尋ねた言葉に返事はなかったが。

見つけてね、と少女は海を見つめたまま言った。だから表情は見えない。囁くような小さな声だった。


早いおいで    
・・・おとうさん  


「・・・きみは誰だ、」


少女はずっと海を見つめている。紫暮の言葉など聞こえていないようだ。


      お父さん
             待ってる・・・わたし、ここでずっと・・・


日が沈んでいく。夜が来るのだ。オレンジはピンクへ、ピンクはラベンダーへと色が変わっていく。少女の姿は消えている。紫暮は一人取り残される。静かな夏の終わりが、ゆっくりと風のなかに溶けていく・・・。

これほど美しい光景は見たことがない。
これほど寂しい光景は見たことがない。

ここは寂しい。だから美しいのだ。こんなところに一人ぼっちでいるのは、とても辛いのではないか・・・。