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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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背中に隠した七星が指を指したのは、滑り台の佇むそばにある木陰だった。そこには、黒い影が立っていた。大きい。長い影が伸びている。微動だにしない人影。

「時計男・・・」

頭から靴の先まで黒ずくめだ。山高帽、裾の長いコートで全身を包んで炒る。沈みかけた日、徐々に塗りつぶされる闇の中、まるで彫像のように動かない。
緊張で忘れていた呼吸を思い出すと、口の中がからからに渇いていることに気づいた。紫暮は注意深く時計男を観察したまま、素早く腕時計に目を落とす。

「時間・・・六時四十五分だよ」

答えてやるとどうなるのだろう。そんな興味に抗えず、答える。


いそがないと・・・
           迎えに・・・


脳に直接、声が響いてくる。離れているのに、くぐもった声が聞こえてくる。七星にもその声が聞こえているのだろう。驚きと恐怖で紫暮の制服のシャツをぎゅうっと握り締めてくる。

「何か・・・困ってるのか?」

影は動かない。緊張で声がかすれる。

「探しているのか、何か・・・」

密封された真空の中にいるような感覚。手足が痺れてきた。

「っ・・・!!」

返事の代わりに返ってきたのは、突き刺さるような視線。錐の一突き、そんな痛いくらいの衝撃があって、紫暮は一歩後じさる。


・・・わたしの、



耳のすぐそこで声がした。体が恐怖で竦む。動けない。指先さえ。



    わたしの こどもは    どこですか


囁きが、全身に張り付く。ぐらぐらと視界が揺れている。その視界が一瞬真っ黒になる。手が、伸びてきた。紫暮の顔を覆い隠すような、どす黒い手が。


あ、と思う間もなく、視界と意識が同時に途切れた。


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