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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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「紫暮くん」
「え、うん?」
「朝、ありがとう・・・」
「朝・・・って」

ああ、山岡のことだ。時計男に声をかけられた七星にしつこく詰め寄っていたから、それとなく話題をそらしたのだ。

「あいつ、悪いやつじゃないんだけど・・・空気読めないっていうか、ガキっぽいとこあるから」
「そっか、小学校一緒なんだっけ。よく知ってるんだね」
「うん。すぐ大騒ぎするんだ。人面犬見たときも、便所に花子さん出たときも・・・」
「花子さん?やだ、なにそれ」

噴出して笑う七星にほっとする。よかった、笑っている。それは偽善的な安心感だとわかっているけど。

「・・・矢野が時計男に声をかけられたのはさ、霊感があるとかないとかじゃなくて、このひとなら自分を助けてくれるって思われたからじゃないのかな」
「・・・・・・」

わかんないけど、と小さな声は囁くように聞こえる。

「わかんないけど・・・助けてあげられるといいね」

助けてあげられるといいね。
自信のないその声が、心地よく感じるのが不思議だった。

(・・・須丸の仕事は、祓うことで助けることじゃない)

助ける、というスタンスを取るのは、これが初めてかもしれない。

「・・・矢野は――」

言いかけたとき。

ざわ、と背中に寒気が走った。ぴんと空気が張り詰める。

「矢野、きたぞ」
「え?えっ・・・」

瞬時に下がる気温。立ち上がった紫暮の影が地面で凍りついたように動かなくなる。


――いま、

・・・なんじですか


低い声。うなるような。紫暮は辺りを見渡す。聞こえた。いる。

「紫暮くん・・・あそこだ・・・」