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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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心なしか軽い足取りで引き返すと、公園の入り口に瑞が立っていた。暗がりにその顔立ちはわからないが、闇の中にいてもはっきりと彼の気配を感じる。闇さえも、瑞を避けているかのような、切り取られた存在感。

「おかえり」
「おまえ・・・どこ行ってたんだ」
「あとは若いお二人でと思って」
「・・・くそジジイめ」

並んで歩き出す。

「ねーあの子とどうだったの」
「・・・ほっとけよ、ひとのことは」

俺は芸能ニュースじゃないぞ、と熱くなる顔をごまかすように吐き捨てた。

「絶対なンかあったろ」
「はあ?なんかってなんだよ」
「彼女の優しさに触れグラッときてしまった上に、情けない紫暮くんも好きだよなんて言われて、舞い上がってんだろ」

・・・おまえ見てたの?

絶句する紫暮などに構わず、口笛なんか吹いている瑞だ。

「あ、そうそう。今夜、最終の新幹線で帰ることになった」
「は?お役目様も?」
「京都での仕事はすべて終わったそうだから」

その言葉に、何だかふいに高揚していた気持ちが沈んでいくのがわかった。

「そうか・・・」

穏やかな穂積の顔が浮かび、ふいに寂しさがこみ上げる。もっと話してみたかった。あのひとになら、この言い知れぬ不安や己の未来への葛藤を素直に吐露できる気がした。だから、もう少し一緒に過ごしてみたかったのだが・・・。

そしてその思いは、この式神に対しても同じように沸きあがってくるのだった。

彼の、彼らのいた短い日々のなかに、何か言葉にはできないかけがえのないものが存在していたような気がして、それがなくなってしまうことがわかってしまって、紫暮は黙り込む。

「不安そうにしてんなよ」
「・・・してない」

ああ、伊吹がうらやましい。道を示す光のように、自分の迷いを打ち消してくれる存在とともに生きられることが。


(俺には俺の役目がある・・・それでも、)


そばにいて


あの歌が蘇る。映画の美しい光景とともに。祈るように歌う声。美しい夏の景色。別れ。
いつの間にか立ち止まっていた。夜の闇にのまれそうな不安。想像していた以上に、自分は脆いのだと気づく。