影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編
「怖いなら、やめる?」
七星の顔を見つめていると、考える前にそんな言葉が出ていた。紫暮のその言葉に、七星が不安そうな目をこちらに向けた。
「やめない・・・」
彼女は退こうとしなかった。
「心配しなくても、俺らはこういうの耐性あるから」
瑞がにかっと笑う。
「そうなんですか・・・?」
「ウン。いろんなもの見てきたから」
瑞の言葉は嘘ではない。紫暮は幾度となく、ひとではない別の何かが絡んだ事件の現場を見ている。清香の仕事だったり、須丸に回された依頼だったり。しかし、見えない世界の存在を、誰よりも紫暮にわかりやすく伝えてくれるのは瑞だった。闇に目をこらす方法、そこにうごめくものたちの感じ方・・・。
瑞の存在そのものが、黄昏時の魔の物に近いのだと思うが、瑞の見せてくれる世界は、清香の隣で見るものとは全く違っていた。
人間と見るよりも、鮮やかで、感情に訴えてくるような。
「さあ、そういうわけで、どうしようか紫暮」
「・・・子どもがいそうな場所で、逢魔ヶ時を待つ。くらいしかなくないか?」
そうだね、と七星が同意する。
「でも目撃されているのは、この児童公園だけじゃないな。候補を絞れないかな」
大丈夫だよ、と瑞が笑う。
「ここに出る」
確信を持った言い方だった。なぜ、と問おうとする紫暮の視線を受けて、彼は人差し指で自分自身を指す。なんとなく、言いたい事がわかった。
ここに出る。瑞がいるから。
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白