影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編
・・・ ひとりで 待っているんです
早く 迎えに・・・
娘を思うその一心が。
視力を失わせ、現実を見ることをやめてしまったのだろうか。自らの死すら。
「・・・!」
影が動いた。ぼろきれをまとったような漆黒の腕が伸びる。背中に七星を庇って剣印を構えた紫暮の目に映る、ずるずると身体をひきずりながら手を伸ばす影。
・・・ ひとりぼっちで
さみしかったろう・・・、もうすぐだ・・・もうすぐいくよ・・・
娘に語りかけるその声が。
どうしようもなく哀れで。切なくて。紫暮は剣印を下げて呆然とする。
・・・よるがくるまでに 迎えに行くって 約束した ・・・から
なにを言えば救われるというのか。時計男は、約束に縛られているのではない。娘を愛する気持ちに縛られているのだ。
そんなのってあるか。愛する娘のために死ぬこともできないなんて。
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白