影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編
下校時刻が過ぎて、いつもの公園が夕焼け色に染まる。もう見慣れたこの場所からの光景を、今日も紫暮は七星と見つめていた。
「・・・今日は、なんかいつもと違う」
夕焼けの色が。山の向こうに沈みゆこうとするその色の、なんと毒々しく禍々しいことか。
「そうだね・・・きれいだけど、怖いくらい」
彼女が同意する声は、緊張でうわずっているような気がした。
オレンジは限りなく赤に近い。くっきりと浮かび上がる太陽は、眩しくて直視できないくらいだ。空も雲も遊具も、紫暮と七星の白い夏服も、すべてが夕焼けにそめられていく。とけてしまいそうだ。
「・・・紫暮くん、」
七星の思いつめたような声。
「か、影が・・・」
彼女が指差す、足元の影に目を落とす。
「・・・凍っているみたいだ、」
影が、切り取られて地面に縫い付けられている。紫暮と七星の動きとは無関係に、ただじっと、絵のようにそこに横たわっている。こんなことはありえない。時がとまっているのだ。
「・・・」
街の喧騒が消えた。住人の気配も。
山の向こうへ沈み行こうとしていた太陽も、動きを止めている。
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白