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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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黄昏にとけて



夜明けが近い。まだ交通量の少ない国道を、瑞は一人で見つめている。薄暗い空の下、そこに男の影が見える。電信柱と、ガードレールの隙間。黒い影が煤のように佇んでいる。それは決して、生きている者には見えない。彼岸を見つめたことのある瞳でなければ、捉えることのできない影だ。

娘を探して彷徨っている父親。
紫暮が見たビジョンを信じるならば、娘が死んだことを知らず、探し続けているという。娘はそんな父親を、彼岸で待ち続けている。

(なぜだろう)

互いを突然失ったのだろうと予想はつく。しかし、死してなお、苦しみ続けながら彷徨うということが理解できない。

執着、と言えば穂積は瞑目して別の言葉を選べと言うだろう。執着ではなく、ではなんだ。絆、愛。そういった感情に瑞は疎い。遠い遠い昔、どこかに忘れたまま生まれてきてしまったようだ。

靄がかかったような自らの記憶。何百年と式神として仕えてきた記憶よりも、もっと奥深く。そこには、誰かを愛した記憶はある。

主であり友である穂積への友愛も。
佐里に感じる愛しさも。
思い悩む紫暮を見ていると沸きあがってくるいじらしさも。

いつかの世で、自分が誰かを愛したことの名残なのだろう。

(感情は死なずに残ったのだろうか)

悲しみも愛おしむ心も費えたと思っていた。だけど穂積と出会うことで、すべてが巻き戻るようにして自分の心に戻ってきた。時計男に感じる思いも、憐憫に似ている。氷のようだった己の感情が、人間達の手によって次々と温かさを取り戻していく。

そしてまだ、蓋のあいていない封じられた記憶と感情の箱があることを、瑞は知っている。