影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編
「たまごやき、綺麗」
「そうなの?俺、料理はさっぱりでよくわかんねえけど」
彩りもいい。赤、緑、黄色。丁寧な作りがわかる。
「朝も早いから顔合わさないままだし、どうやって作ってんのかも謎」
「忙しいんだね」
「でもちゃんと弁当作ってくれてあるから、有難いなって思う」
えらいなあ、と七星は感心する。ちゃんとお母さんに畏敬の念を抱いている。
「矢野のだってうまそう。オムレツ弁当」
「・・・うち、お母さんサザエさんみたいなの。時々塩と砂糖を間違えるから、食べるときドキドキしちゃうよ」
「ふはっ、サザエさんて」
紫暮が噴出して笑う。あ、笑った、と七星はその笑顔にときめく。かわいい。子どもっぽくなった。やっぱ好き。いろんな感情が押し寄せて、頬が熱くなるのがわかる。
「そうだ、これ」
弁当箱を包み終わった紫暮が、制服のポケットから紙切れを取り出して差し出してきた。
「新聞記事・・・?」
市外のひき逃げ事故の小さな記事のコピーだった。
「瑞が、今朝から現場と警察署に行ってる」
「えっ、この人のこと聞きに行ってるの?」
「あいつそういうの得意だから、うまくやると思う。現場にも痕跡があるかもって」
「身元不明・・・このひとが、」
「時計男かもしれない」
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白