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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編

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(伊吹くんか・・・いつ会ったのだっけ)

清香の還暦祝いのときだったか。穂積の後ろに隠れていて、顔など殆ど見ていない。

(・・・俺と同じような重圧を、あの子も感じる日がくるのかな)

定めの子。己の未来や役割に、押しつぶされそうになるのだろうか。清香を前にして紫暮が感じるような、苦しさやどうしようもない煩わしさに。

(・・・だけど、伊吹くんには瑞がいる。生涯、決して離れない存在がある。それだけで、救われることもあるだろうな)

伊吹の役目の重さは、紫暮とは根本的に違う。結婚すら許されていない。だが彼は孤独ではない。この式神がそばにいてくれるのだから。

(うらやましいのかな、俺・・・どうかしてる・・・)

「えーっと・・・あ、俺この映画好き」

リモコンをいじっていた瑞が、映画のチャンネルで止める。

「え、おまえ映画観るのか」

芸能ニュース以外にも興味があったのか。

「うん。穂積が好きで」
「これってあれだろ、線路歩いて死体を捜しに行くんだっけ?」

古い古い洋画だ。エンドロールに流れる主題歌と、子ども達が線路を歩くシーンが有名なことは、映画にはあまり興味のない紫暮でも知っている。

「十二歳のあのころのような友だちは、もう二度とできない。もう二度と」
「・・・?」

・・・劇中のセリフだろうか。瑞はそれきりテレビに意識を向けてしまい、紫暮との会話は終了した。

映画を三人で一緒に見た。美しい景色、爽やかな夏。笑顔の裏に、強がりの裏に、悲しみやどうしようもない思いを抱えた登場人物達。エンドロールを迎える頃に残ったのは、苦しいような悲しいような、それでも無理して笑う優しさのような、複雑な感情だった。
そばにいて、と繰り返す印象的な主題歌とあいまって、紫暮の心に強く残る。

「・・・古い映画だろって馬鹿にしてた。思ってたより、すげえよかった」

いろんなシーンが印象に残った。不覚にもうるっときた場面もあった。泣かせよう泣かせようという昨今の映画とは違い、視覚や聴覚ではなく、感情に訴えてくるような隠れた言葉を何度も感じた。自分の中にある、自分でも知らなかった感情を、静かに揺さぶるような映画だった。

率直に感想を述べると、瑞が嬉しそうに笑う。

「ジジイになってから見ると、もっとそう思えるんだってさ。なあ穂積」
「うん、ジジイには沁みる映画だよ」

チャンネルを変えながら、瑞は楽しそうに穂積と会話をしている。
この二人の関係は、主従というより友人だ。年の離れた親子のようにも見える。そばで見ていて、肩の力が抜けるような。ようは互いに気を遣うこともなく自然体なのが伝わってくるのだ。

「十一時になる。そろそろお休み。遅くまで付き合わせて悪かったね」
「そんな。よかったです、ご一緒できて」