影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編
(神末に生まれる長男は、神と婚姻し、強大な力を得る・・・だっけ)
そのため生涯独身を貫き、跡継ぎを生むのは女の役目だとか。
「ああ、瑞(みず)も一緒らしいわ」
清香がため息混じりに言う。
「しばらくは、やかましなるねえ」
そういい残し、清香は言ってしまった。
(瑞か・・・)
瑞とは、代々神末家に仕える式神だ。名と人間の姿を与えられている。この護法神の力と神の花嫁の力。神末はこの二つにより強大な力を手にしているのだと聞く。
その二人がやってくるという。瑞が一緒ということは、おそらく厄介な仕事だろう。紫暮は靴を脱いで屋敷へ戻った。
「紫暮くん、ご飯できてますよ」
「はい」
お手伝いさんに返事をしてから、自室に向かう。両親とも忙しく、まだ戻っていない。制服を脱ぐと、ポケットから先ほど受け取ったラブレターが舞い落ちた。
「・・・・・・」
気持ちもないのに返事はできない。かと言って、思いのこもったものを捨てることもできない。まるで呪いだ、とげんなりしながら、紫暮は机の引き出しにそれをしまおうとした。
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白