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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編

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夏の終わりと秋の始まりが、交じり合った季節だ。残暑は厳しいが、風にはどこか寂しさに似た匂いが混じっている。日が暮れかけた交差点で同級生らと別れ、紫暮は山に続く坂道を登る。

紫暮は、京都の北山に居を構える須丸本家に生まれた。古く土御門家(つちみかどけ)の血を引く、陰陽師の家系である。
時代が変わっても、その裏側でひっそりと息づくものがある。目に見えない闇は確かに存在して、人々の身近に息づいている。須丸はそんな闇を見据え、生きた人間の生活の害をなすものであれば祓い清めることを生業としてきた一族だった。

(あっついなあ)

日が落ちてもムシムシする。本邸の門をくぐって玄関へ続く石段を登るころには汗だくだった。

「紫暮、帰ったんか。おかえり」
「ただいま戻りました」
「お疲れさん。暑かったやろ」

これが須丸一族の当主、須丸清香(きよか)だ。紫暮の実の祖母にあたる。
女でありながら、巨大な一族をまとめあげている。日本の裏でひっそりと歴史を動かしてきた須丸家は、古くから政界と太い繋がりを持ち、今も大きな影響力を持っていた。清香は政治力に優れ、その外交手腕でもって一族の確固たる地位を守り続けている。そして清香自身もまた、強大な力を持つ陰陽師だった。

本家筋の孫にあたる紫暮は、彼女の跡を継ぐ次期当主候補の一人だ。

和服の似合う穏やかな老女は、玄関で紫暮を迎え入れるや否や、草履を履いて外套を羽織る。でかけるようだ。

「ご飯、先に食べとって。すぐに戻ると思うけど、おなかすいてるやろ」

付き添いのタクシー運転手が開けた扉に慌しく乗車するのを、紫暮は見送った。

「分家へ?」
「ううん、京都駅まで、穂積(ほづみ)様を迎えに」
「・・・お役目様がいらっしゃるのですか?」
「急な仕事でお呼びさせてもらったんどす。しばらくうちにおっていただくさかい」

穂積、というのは神末(こうずえ)穂積のことだ。もとは須丸家と血を同じくする神末家の現当主である。

神末家の長男には代々、強大な力が宿る。須丸をしのぐその力は、魔を祓い、自然をも操るという。須丸家は、この神末家をバックアップする役割も担っている。

日本中から、須丸家に集まる怪奇な依頼。恨みを買う政治家からだったり、著名な神社からだったり、民間レベルの霊能者では解決できない依頼。それを解決するのが須丸家の基本的な役割だ。

しかしときに、多くの陰陽師を抱える一族にも解決できない依頼がある。より高度で難解で、解決不可能なものは、清香を通じて神末家に回される。

神末は、多くの陰陽師を抱える須丸とは違う。陰陽師として力を持つのは、お役目様と呼ばれる、代々の長男ただ一人。それでも、須丸の術者が束になってもかなわないほどの力がある。