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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編

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「紫暮(しぐれ)くん、これ読んで下さい!」

放課後、部活に行こうとしていたところを呼び出され、何事かと思えば手紙を渡された。受け取ってくれないと手はひっこめない、そんな気迫に負けてかわいい封筒を受け取る。

「・・・なにこれ」
「て、手紙とわたしのアドレス。あの、ずっと、いいなって思ってて。よかったら、付き合って欲しいの・・・」

同級生の少女に告白されるのは、中学に入って四度目だろうか。自分なんかの何がいいのか、紫暮は自分ではわからない。自分が女なら、愛想もないこんな男は願い下げなのだが。彼女は吹奏楽部の矢野七星(ななせ)だ。三年生になってから一緒のクラスになって・・・この夏は宿泊研修で同じグループだったっけ。冷めた頭でそんなことを考える、訴えるような目で見つめてくる矢野七星の瞳から目を逸らした。

「ごめん」
「・・・なんで?他に好きなひといるの?」

付き合えないって言ってんだから、潔く引き下がれよ。内心で毒づくが、女子にそんなことを言えばどうなるか。適当に言い訳を考えて告げる。

「いないけど・・・面倒で」
「面倒って・・・」
「俺、電話もメールも嫌いだし。だからごめん」

これ以上は無理。紫暮は逃げるようにしてその場を去る。矢野七星は呆然と立ち尽くしたままだった。

「受け取るくらいせえよ」

階段の脇で、教師に出くわした。渋い顔をした老教師は、かわいそうにと眉を下げる。

「何のぞいてるんですか・・・」
「たまたま聞こえただけだ。おまえなあ須丸(すまる)、女の子と付き合うのもいいもんだぞ。恋愛でしか気づけんことや、学べんこともある」

何がいいもんか。好き勝手言ってくれるよ。

「男として名誉じゃろうが。何が不満なんじゃ。矢野かわいいのに」
「だって女って・・・」
「ん?」
「・・・・・・」

脳裏に浮かぶ、祖母の顔。紫暮はため息をついて手を振る。

「何でもないです、俺部活行くんで」

須丸紫暮、14歳。思春期真っ只中だというのに、恋愛にはいまいち興味が持てない。

その理由は出生と、彼を取り巻く女性にある。





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