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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編

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ぴん、と空気が止まる。風がやみ、音が消える。濃い夕やけが、毒々しく空を彩る一瞬だけ訪れる、意図されたかのような静寂。

(・・・きた)

紫暮はじっと周囲に注意をこらす。この瞬間が訪れることを、紫暮は確信していた。

昨日と同じ、時が止まったような感覚。夕暮れ時にまぎれこむまがいものの街が、影のように空間を覆い隠していくかのような。一瞬で、裏と表がいれかわったような違和感。

時計男が来るかもしれない。こんな空間を作り出しているのなら、それは変質者でも都市伝説でもない、怪異だ。

祓う?できるのか、俺に。情報も少ない。ましてや夕闇に閉じ込められたこの空間で、術や退魔法がきくのだろうか。そんな焦りが過ぎり、不用意に怪異に近づいたことを後悔する。そのとき。

「!」

空気が、止まっていた時間が動き出す。こちらがわの感覚が戻り、影が、オレンジの空の雲の形が動き出す。

(・・・抜けた?)

そこはもう、普通の公園だった。一瞬でまた、世界は表側に戻ってきたのだ。なぜ、と思い辺りを見渡すと、公園の入り口に誰かが立っているのが見えた。

「・・・矢野?」

ティーシャツにショートパンツという見慣れぬいでたちだが、それは紛れもなく矢野七星だった。膝小僧には大きな絆創膏がはられている。うかがうようにこちらを見ていた。

「何してんだ!」

思わず厳しい声が出た。昨日あんな怖い目にあったくせに、この夕暮れ時にまた一人でこんなところにやってきた彼女の、危機感のなさに腹が立ったからだ。

「ご、ごめん!」